空木岳池山尾根リーダー報告 |
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空木岳へアタック |
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日 程 | 12月28日〜12月29日 |
メンバー | 花折m(CL。明峯・らくなん)、奥西(SL、らくなん)、花折w(明峯)、網岡w(らくなん) 東(山城)、中島(田辺) |
報告者 | 花折n(CL) |
コース | 空木岳池山尾根往復 コースタイム |
12/28(日) 曇りのち晴れ | |
6:45 | 萱ノ台駐車場発 |
7:05 | 駒ヶ根高原スキー登山口 三本木地蔵(遭難碑) 旧池山小屋への分岐あり(登山道から100m) |
10:10 | 池山小屋への分岐 |
12:44 | マセナギ |
12:57 | 2080mピーク手前 |
13:44 | ヤセ尾根注意との看板 大地獄 小地獄 |
15:00 | 迷い尾根(標識と迷い込まないようにロープが張ってある) |
17:00 | ヨナ沢の頭 テント設営 |
21:30 | 就寝 |
12/ 29(月) 晴れ |
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6:00 | テント場発 |
7:00 | 南アルプスが見える平らな地点 日の出間近 尾根に出ると単独の登山者に出会う |
8:50 〜57 | 駒峰ヒュッテ |
9:10 〜17 | 空木岳 |
9:27 〜40 | 駒峰ヒュッテ |
10:52 〜11:35 |
テント場 撤収 |
12:05 | 迷い尾根の標識 |
12:20 | 急なルンゼ ハシゴあり |
12:55 | ヤセ尾根注意の看板 |
14:05 | 池山小屋への分岐 水を飲む |
15:05 | 林道 |
16:00 | スキー場登山口 |
16:14 | 駐車場着 |
12月28日(日)晴れ |
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らくなん山の会発足以来恒例となっている明峯とらくなんの合同隊の冬山登山に、昨年から山城と今年はさらに田辺が合流しての登山隊となった。 27日夜、花折。奥西の2台に分乗して駒ヶ根の駐車場に到着し、車内で仮眠する。翌28日、5時に起床して出発準備をし、明るくなってから出発した。2日前迄は、日本列島は冬型の気圧配置で、各地で積雪があり、名神高速道でも通行止めになったりしていたので、ここ中央道周辺でもかなりの積雪がと思いきや、このあたりは全く雪が降らなかったようだ。スキー場の横を登っていくのだが、人工雪以外に積雪は全くなし。一週間前から携帯の山岳気象サイトで空木頂上の気象をずっとチェックしていたが、当初は28日は曇り、29日は雪時々曇りであった。しかしそれがだんだん良い方に変わっていき、出発する前では、28日は午前中は曇り午後から晴れ、29日は晴れの予報であった。悪い天気を予想していたので、この変化についつい気分がよくなって、隊全体の雰囲気も明るく、軽やかな出発となった。 最初はスキー場の駐車場から入り、コースの横の桧の樹林の中を登ることになる。コースの最終を過ぎ、どんどん高度を稼ぐと3度、林道と交差する。その最後が駐車場となっていて、トイレもある。ここからいよいよ空木へ入るという気分が高まってくる。どうやらこの先もしばらくは林道をつける計画があるらしく、道は非常に緩やかで大きく迂回しながら登ることになる。 高度がなかなか稼げず、まどろっこしい登山道だ。少しずつ積雪も増えては来るが、それでも15cm程度。立派な野鳥観察小屋からは池山を巻くように登り、旧池山小屋跡を過ぎて一ピッチ足らずで新池山小屋に着く。ここでは登山道わきに水道があり、おいしい水が流れ出ていた。小屋は少しルートから外れているので、我々はそのまま上を目指す。しばらくトラバース気味に登って、左の尾根に向かって登りだす。ようやく積雪も20〜30cmを超えるようになる。この辺りではまだ12時にもなっていなくて、「今日の目的のヨナ沢の頭に早く着いたら、上の空木避難小屋まで頑張ろうぜ。」などと、たわごとが出てくるぐらい順調であった。これは、このあとはっきりしてくるのだがとんでもない読み違いであった。 地図上の距離で来し方と行く末を計算すると、日が暮れる前には空木避難小屋まで到達できるように思えてくる。ところがここから思いのほか時間がかかった。考えていたより高度差があったことと、大地獄、小地獄の痩せ尾根や急なルンゼのトラバースなどで緊張を強いられたことが原因だ。そのトラバースは風成雪のため、途中で出会った下山者のトレースが消えていた。無理をすればそのまま通過できるのだが安全を期して、一か所ロープを出したことも時間を要した一因だ。迷い尾根に出た時には、なんと15時になっていた。新池山小屋から4時間を使ったことになる。これでは避難小屋までなどとんでもない。ヨナ沢の頭にさえ、明るいうちに着けるのかと心配になってくる。 メンバーの疲れもピークになっていた。それでも一歩一歩足を前に出せば必ず目的地に着けることは、我々の経験則である。力を振り絞って頑張り、なんとか明るいうちにヨナ沢の頭に到着する。すぐに場所を決め、風上にブロックを積みながら整地をして、テントを張る。暗くなると同時に全員テントの中に潜り込むことができた。メンバーの中には、雪上でのテント泊が初めての者もいるので、テントの張り方、中での生活など、今後のためにはいい経験となったことだろう。6テンで6人は狭く、その上急いで張ったので整地が十分でなく、熟睡とは程遠い夜となった。 |
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12月29日(月)快晴 |
ほとんど眠れないままに3時半起床。昨日の打ち合わせでは明るくなってから出発としていたが、ヘッドランプで出発することとして、準備にかかる。それでも何やかやしているうちに出発は6時になる。ここからは尾根上で危ないところはない。やはり昨日同様一歩一歩、歩を進める。柔らかいところもあるが全体的には表面がクラストしていてアイゼンがよく効き、どんどん高度を稼ぐ。出発前に見た携帯サイトの天気予報通り快晴。これ以上の天気はない。途中で完全に明るくなり、南アルプス、北アルプスも遮るものはない、360度の大展望に恵まれる。2550mを超えると二重山稜となり、駒石の方の稜線を取って登っていく。前方には駒峰ヒュッテの上に空木岳がデンと控えている。気分も最高、何も心配することはない。途中、単独行の下山者と出会った。「頂上付近は凍っているので気を付けてください。」とのこと。それでもつく頃にはかなり緩んでいるだろうと思い、それほど気にも留めなかった。ところが、その後、ぞっとすることが起きるのであるが、この時には知る由もない。 順調に高度を稼いで、駒峰ヒュッテに8時50分着。一息入れて、空荷で頂上を往復することにする。奥西・網岡・東・中島・花折忍・花折敬の順で登る。頂上直下はかなりの傾斜である。あと少しで頂上という時であった。花折忍がアッと声を上げる。上を見ると、中島さんが落ちてくる。とっさに一歩横に出て、私が受け止める。止められるかという不安が一瞬よぎる。ドンという重量感。幸い止まった。落ち着けと自分に言い聞かせて、中島さんを安定させる。立ち上がってホッとである。この後、私は中島さんの腰に手が届くくらいすぐ後ろにつき、ようやく頂上に立った。 振り返るに、目の前を行く中島さんのアイゼンワークが気にはなっていた。斜め登りの時、上の足の山側の爪だけで雪面をとらえていたのである。気がついたときにすぐ注意をするべきであったのを怠ってしまった。事なきを得たのはラッキー以外の何物でもない。もし、私がすぐ下にいなければ…、もう少し離れていたら…、受け止めた時一緒に飛ばされていたら…、などと考えるとゾッとする。小屋の前あたりが少し緩くなっているのでとまったかもしれない。しかし、どんどんスピードが加速して数百メートル滑り落ちて、下の疎林の木に激突していたらなどと考えると、恐ろしくなる。 頂上では快晴の下、欲しいままの展望を楽しむ。風もほとんどなく、冬山でこれ程の好天はまれだろう。私にも記憶がない。記念写真と周りの山を撮影して、下山にかかる。来たルートをとって返すのは少し不安があった。反対側を見ると傾斜は多少緩やかである。そちらから下ることにする。少し下って、登ってきた方に50mほどトラバースする。斜度は30度くらいなのだろうが、先ほどのことがあり緊張する。慎重に慎重にと絶えず指示をして、ようやく緩傾斜地帯に到達する。これで無事帰れると思ったらなんだか嬉しさが込み上げてきた。 小屋前で10分ほどの休憩で腹ごしらえをして、下山にかかる。駒石まで少し注意して歩けば、後はただひたすら下るだけ。下るのは早い。明日からは冬型になり雪が降るとの予報なので、今日中に安全地帯まで下りたいというのが出る時からの目標である。どんどん下っていく。後ろを振り向けば空木岳が、私達に微笑みかけてくれているように感じる。 ヨナ沢の頭のテント場に11時前に帰り着く。すぐにテントを撤収する。1時間を見ていたが、手際よく片付けられて、11時半には出発できた。来る時にロープを出した個所が気になっていたので、全員に腰にシュリンゲを巻いて、すぐにロープにカラビナがかけられように指示を出す。私もロープをザックからすぐに引っ張りだせるように、端を外に出して下山にかかる。昨日登ってきた時間が嘘のように、どんどん距離が稼げる。迷い尾根まで30分。さらにロープを出したルンゼまで15分。我々の前に下った人が一人、登ってきたパーティーが3人、すでにここを通過していて、ロープを出す必要は全くなく、何の問題もなく通過することができた。雪質とトレースでこれほど違うものなのかと、昨日の状態が信じられない。小地獄、大地獄も問題なく通過して、コーション(危険地帯)の看板手前まで約1時間。これでほとんど危ない個所はない。後は、ただひたすらスキー場を目指して下るだけだ。新池山小屋で水を補給。渇いた喉にうまい。ここから林道まで、ゆるい道が長い。さらに1時間少しで車を止めた駐車場に到着する。4時少し過ぎに帰り着くことができた。 大きなひやりハットはあったが、とりあえず無事下山できたことを喜び合いたい。しかし、きちんと状況と要因を整理して次の山行に生かすのが我々労山の大事な活動の一つである。後掲することとする。 この後、すぐそばにある「こまくさの湯」で2日間の汗を流して帰京の途に就く。 |
<ヒヤリハット> |
場 所:空木岳頂上直下 状 況:快晴、クラストした35度弱の斜面。アイゼンは気持ちよく効く。 原 因:・足の疲れ。 ・アイゼンワーク…ツァッケと雪面との関係がフラットでない。 ・ピッケルの使い方がおろそかになっていなかったか?…しっかり突けていたか?ピッケルストップがすぐできるように持っていたか?(滑落時、ピッケルストップの体勢になっていなかった。) ・天気がよく、気持ちに緩みがなかったか? ・危ない斜面はないと判断して、ロープを所持していなかった。 ・リーダーが全員の疲れ具合を判断していなかった。昨日の続きで中島さんがかなり疲れていたことは、その様子から判断できた。 今後の対策: ・クラストした斜面に入る場合は、必ずロープを使用すること。 ・疲れ具合をお互いに知らせ合って、しっかり判断し、直前に十分休憩を取ること。 ・アイゼンワーク、ピッケルワークのトレーニングを十分すること。事前の全員のトレーニングは欠かせない。今回は全員がそろわず、1回しかできていない。 ・技術レベルのそろわないパーティーの場合は、決して無理をせず、たとえピーク直前であっても勇気をもって撤退することが必要だ。しかし、今回、あの状況ではその判断をすることは難しかったと考える。雪面状況も斜度も危険と判断する状況ではなかった。リーダーとして問題なく登れると判断しての行動だった。(それが甘かったから今回のことが起きたのだが…。) |