北アルプス大縦走

白馬岳から双六岳(8泊9日)
山行日 2010年8月5日(木)から8月14日(土)
参加者 CL奥西、網岡国、花折敬、花折忍   
五竜岳から針木岳:土岡   針木岳から:川野、永井    報告:奥西

8月5日(木) 京都〜栂池スキー場
午後8時花折号が奥西宅に、次に8時20分網岡宅へ。4人を乗せ、名神、北陸道を走り糸魚川ICで降りる。一路栂池高原のスキー場へ向かう。6日(金)の午前1時30分頃到着。テントと車に分かれて仮眠。
 天気はまあまあで、雨の心配はない。星も出ている。


1日目 8月6日(金) 栂池スキー場〜白馬岳
 ロープウエー終点出発7:50 ― 8:53天狗原手前9:00 ― 10:02白馬乗鞍岳2437m10:13 ― 11:07休憩11:15 ― 12:15休憩12:25 ― 小蓮華山2769m ― 13:25休憩13:35 ― 14:00白馬岳2932・2m14:10 ― 14:30村営白馬岳頂上宿舎

午前7時、登山者や観光客でにぎわうゴンドラに乗りいよいよ出発。10日間の大縦走がいよいよ始まった。本当に10日間も歩けるんやろか?という不安な気持ちと、1日1日を積み重ねたらきっとできるという意欲的な気持ちが心の中で混じり合い、変な平衡感覚が漂っている。冷静な気持ちでもなく、高ぶった気持ちでもなく!
 7時50分いよいよ歩き始める。3年前の4泊5日の縦走の記憶がよみがえってくる。花折敬さん先頭に、我々はゆっくり歩く。続々と登山者が登って来て我々を追い抜いていく。いつものことながら、元気のいい若者を除いて、最後には我々が先に行くことになるが! 天気は絶好の登山日和といって良い。ガスがかかったり、時にはガスがとれて展望が出たり、青空が見えたりという天気である。時折涼しい風も吹く。 樹林帯の中を淡々と登っていくと平原状の所にくる。さっそく白い可憐な花のチングルマの群落がお出迎えである。もうとっくに終わっているはずだが、このあとも何カ所かで大群落が見られた。天狗原が近い。 天狗原はワタスゲの白い花が風になびいていた。ここは木道が整備されている。風吹大池への道を分けると、岩稜帯の急登になる。 雪渓が出てきて渡り、なおも急登をひと登りすると、道は平になる。白馬乗鞍岳である。周りの木々はハイマツに変わっている。 テント泊の花折夫妻のザックは重たい。20kgはあるという。
天狗原の木道 白馬乗鞍岳(2436.7m)

高原状の大地になっている白馬乗鞍岳(2436・7m)石塔が目印である。第1段階の登りが終わり。白馬乗鞍岳から少し歩くと白馬大池が見える。 なかなか大きな池だ。 20分で池へ! 開けているので、開放的な気持ちになる。
ここから雷鳥坂の登りになる。船越の頭を経て小蓮華山までの長いだらだらした登りが始まる。しかし、ハクサンコザクラ、コゴメグサ、ウサギギク、イワイチョウ、アズマギク、エゾシオガマ、ヨツバシオガマ、イブキジャコウソウ、タカネナデシコ、ハクサンフウロなどの花々が競うように咲き誇り、しんどさを和ませてくれる。 まだかまだかと思っていた小蓮華山(2768・9m)が近づいてきた。 だけど白馬岳までは、まだまだ遠い。 重いザックの花折夫妻はしんどそう!!
ガスは切れ、視界が広がり、周りの山々が見え始めた。 ここからは、小蓮華山を過ぎ、いったん三国境まで下り、雪倉岳・朝日岳への道を分け、馬の背を経て白馬岳にいたる。白馬岳が近づくと「あと少しの元気」が出てくる。目の前に旭岳、後ろには雪倉岳の風景になると白馬岳は本当にあと少し。
小蓮華山(276839m) 白馬岳(2932.2m)

すっかり青空の白馬岳(2932・2m)に午後2時到着 たくさんの人がいる。今日は3つの頂を踏んできた。 頂上宿舎には2時30分到着。50人程度の宿泊者で、閑散としている感じ。 本日の行動時間は6時間40分。恒例の宴会をして、バイキングの夕食を食べて、就寝。 30人ほどの部屋に、寝たのは4人だけだった。花折夫妻はテント。


2日目 8月7日(土)白馬岳頂上宿舎〜五竜山荘
 小屋出発5:30 ― 6:28杓子沢のコル6:35 ― 7:12白馬鑓ヶ岳(2903.1m)7:18 ― 8:12天狗の頭少し手前で休憩8:22 ― 9:30天狗の大下りを下って休憩9:40 ― 10:00不帰嶮一峰の頭 ― 10:50二峰の核心部終わりで休憩11:00― 12:00唐松岳(2696.4m)12:17 ― 12:30唐松岳頂上山荘―13:19休憩13:30 ―14:15白岳手前で休憩14:25 ― 14:50五竜山荘

5時30分小屋を出発。今日も天気は昨日と同じ感じ。暑くもなく、寒くもなくの登山日和だ。 小屋泊の自分のザックは15kg程度。25kgのザックを背負ってトレーニングをしてきたので、そう重さは感じない。 昨日見た花に加えてウルップソウ、アケボノソウ、ミヤマヨモギなどの花も加わり、花畑の中を歩いていく。 今日は難所の不帰嶮を越えて、五竜山荘までの約10時間の行程である。 さっそくガスってきた。でも、何回も通った道なので周りの風景は頭の中にある。それを描きながら歩く。杓子岳はトラバース。すぐに白馬鑓ヶ岳の登りにさしかかる。ここの登りはなかなか急登である。朝一番の登りになるので、あわてないでゆっくり登る。
白馬鑓ヶ岳(2903.1m) 天狗の頭(2812m)

ガスの中、小さい岩くずでがらがらのガレ場を、落石をしないように慎重に下る。 白馬鑓温泉への道を分け、なおも下っていくと、雪渓が出てくる。天狗山荘が建っている。 ここから天狗の頭までは平坦な歩きやすい道になる。 この後 2411mの不帰キレットまでの400mのガレ場や鎖場の急降下になる。「天狗の大下り」という。 ガスの切れ目から見ると、谷底まで下る感じ!  大きいザックを背負って、鎖場を下る花折忍さん。 ここの鎖場はなかなか長い! 不帰キレットのあたりでライチョウに遭遇。ほっと気持ちが和む。 キレットからひと登りで不帰嶮一峰に到着。いったん下って不帰嶮の核心部の二峰に取り付く。こんな岩場どうして登るのという感じの岩稜が迫ってくる。しかし、難所には梯子や鎖が取り付けてあるので難しくはない。落石をしないように慎重に確実に歩めば特に問題はない。
不帰檢トラバース中 五竜山荘

初めの登りは最後に梯子でこえ、岩稜帯の左手に入りトラバースして、岩稜帯の裏側に進む。 裏側に回り、再び鎖が何カ所かある急登を登る。 難しくはないが慎重に! 二峰を越える。核心部を越えて、休憩! あとは三峰をトラバース気味にこえ、唐松岳へ。頂上にはたくさんの人。八方尾根からのコースがある。写真を撮るときはガスっていたが、出発の時はガスが切れ、周りの風景が復活。 唐松岳から五竜山荘までまだ3時間はある。さあ!ふんどしを締め直して出発!!  唐松岳の小屋からすぐに鎖場がある。岩稜帯を慎重に進む。小さいアップダウンを繰り返し2511mの大黒岳を越えてなおも下る。コルに下り、前に白岳2541mが見えると五竜山荘は間近だ。 早く着いていた土岡さんと合流。土曜日なので小屋もテント場も満員の盛況。さっそく宴会、合流を喜び合う。夕食はカレーライス。今時ちょっと寂しい夕食だった。今日の行動時間は9時間20分。


3日目 8月8日(日) 五竜山荘〜種池山荘
小屋出発5:30 ― 6:25五竜岳6:35 ― 7:46北尾根の頭手前で休憩7:55 ― 8:28口ノ沢のコル ― 9:00休憩9:10 ― 9:30キレット小屋9:38 ― 10:25休憩10:35 ― 10:55鹿島槍ヶ岳北峰・南峰を結ぶ吊尾根出合(ザックをデポ) ― 11:08鹿島槍ヶ岳・北峰(2842m)11:15 ―11:47南峰(2889・1m)11:52 ―12:50休憩13:00 ― 13:14冷池山荘通過 ― 13:35休憩13:45 ― 14:40爺ヶ岳南峰14:50 ― 15:20種池山荘

今日は前半の一番のハイライトの日である。五竜岳に登り、八峰キレットを越え、鹿島槍ヶ岳に登り、冷池山荘に行く9時間のコースである。岩稜帯の歩きがずっと続く。 天気は、雲は多いが青空も見えている。直射日光に当たることはほとんどない。ガスはかからず、周囲の風景がよく見える。今日も登山日和になりそうである。
土岡さんが加わり、5名で午前5時30分に出発。 身体が温まっていない初めの1ピッチはゆっくり歩く。初めは緩やかな登りが続く。 五竜岳の登りの途中で、双耳峰の鹿島槍ヶ岳がくっきりと顔を見せ始めた。 今日は、そこを越えてまだ向こうへ行く。 長い道のりだなあ! いったん少し下り、再び岩稜帯の登りになる。 降りてくる人もたくさんいて、すれ違いで渋滞だ。 登るものにとっては、ちょっと一休みできる。
土岡さんと合流 五竜岳(2814.1m)

6時25分 五竜岳(2814・1m) 劔岳が黒部の谷を挟んで、くっきりと頂をそびえ立たせている。威厳のある山だ。 2年前に登った源次郎尾根はあれかな? 振り返れば白馬三山がはるか向こうに小さく見える。ずいぶん歩いてきたんだな! ここから鹿島槍までは、急な岩稜帯のアップダウンの連続だ。ここかしこに鎖が設置されている。見通しがよいのでルートが見えるが、どこまでも下っていっているように見える。そして、その先には鹿島槍がどんとそびえている。 多くの人は五竜岳まで。すっかり人は少なくなった。 初めはどんどん下る。こんな鎖場もある。道はザレているので落石には注意して下る。
またガスってきた。 下りが終わると、今度は岩稜帯のアップダウンが続く。 今度は鎖場を登る。 こんな上り下りが何回も!!  途中でライチョウにも出合う。 やっとキレット小屋に9時30分到着。 五竜山荘からちょうど4時間。いいペースで歩いている。 3年前はここに泊まった。 やっぱり速いペースだ。キレット小屋は満員で、予約客しか泊まれないという張り紙が!!  さあ!気合いを入れ直して、鹿島槍ヶ岳の登りに取りかかる。初めは梯子場、鎖場が連続する。慎重に通過する。 右側が切れ落ちた狭い道を慎重に通過する。 吊り尾根の出合いまでは、急な岩稜帯の登り一方の歩きになる。 しかし、1時間ちょっとで出合いに到着。 がんばった!!
 ザックをデポし、鹿島槍ヶ岳・北峰(2842m)に登る。ガスって景色は見えず。次に南峯に向かう。
キレット鎖場 鹿島槍ヶ岳南峰(2889.1m)

ここでは視界が開け、歩いてきたルート、これから行くルートがずっと見える。ずいぶん来たけど、先はまだまだ遠いが、実感だ。 富士山が遠くに浮かんでいる。 あとは、難所はない。ひたすら歩くだけであるが、ここまで快調に歩け、時間も早いので、冷池山荘は通過して、種池山荘までというのが、みんなの心の中での合意になっているようだ。 布引山2683mを通過、またまたお花が目を楽しませてくれる。今回は結構ウサギギクが目についた。群生しているところもあった。13時14分冷池山荘通過。爺ヶ岳の登りになる。赤い屋根の種池山荘がずっと向こうに見えている。遠いなあ!みんなの足取りも疲れ気味だ!!  爺ヶ岳を見ながら歩く! 道は淡々と登っている。 だんだん近づいてくる!! 爺ヶ岳南峰 種池山荘はもうちょっと 種池山荘前のチングルマの大群落を眺めながら3時20分到着。
 今日は9時間50分の行動時間でした。お疲れさんでした。


4日目 8月9日(月)種池山荘〜針ノ木小屋
 山荘出発5:45 ― 6:50休憩7:03 ― 7:20岩小屋沢岳 ― 7:52新越山荘8:05 ― 8:45鳴沢岳9:00 ― 9:52赤沢岳10:04 ― 10:52休憩11:04 ― 11:36スバリ岳11:48 ― 12:25針ノ木岳12:30 ― 13:05針ノ木小屋

 夜に小雨があったようで濡れている。出発時もガスって、霧雨が降っていたのでカッパを着用して出発。  部屋では奈良の3人パーティーといっしょ。 よく眠れた。 談話室が小さく宴会ができなかった。休肝日にして、ちょうど良かったかな!  この辺りはお花畑が続く。キヌガサソウ・イブキジャコウソウなど多くの花が咲いている。やがて、青空が出てきた。休憩時にカッパを脱ぐ。 ザックが重いと言いながら、元気な花折敬さん。 岩小屋沢岳2630・3m 2年前に登った源次郎尾根が見える。新越山荘に向けて下る。 途中で、我々の前をちょこちょこと歩くライチョウに出合う。 先導するようにかなり長く歩いていた。 3年前にも同じ場所で出合った。 針ノ木雪渓は谷の半分ぐらい雪が残っている。 その上に目をやり、稜線のコルをよく見ると、なんと槍の穂先が小さく浮かんでいる。 うーん、近づいてきたんだ。
岩小屋沢岳(2630.3m) 鳴沢岳(2641m)

新越乗越の新越山荘が見えてきた。 そして、登り返すと鳴沢岳2641m。 昨年の4月末に伊藤さんが遭難した山だ。 右に目をやると、黒部渓谷を挟んで、劔岳から立山三山が、斜面に雪を残して連なっている。 新越山荘を越え、再び登りになる。かなりの急登を登る。頂上かなと思うと、まだ先がある。3回目ぐらいで山頂に立つ。 花折敬さんが伊藤さんの遭難を振り返っている。 登ってきたルートや頂上付近の様子から見て、伊藤さんにとってはそんなに難しくはないはずなのに、なぜ遭難したのだろう。どんな判断の誤りを犯したのだろう。疑問は増すばかりである。 3人の冥福を祈って、合掌。
 いったん下り、扇沢から黒部ダムへ行く関電トンネルの上を通り、ガラガラの岩の道を登っていくと赤沢岳2677・8m。 眼下には黒部湖。湖上を観光船が進んでいる。 丸山東壁が見える。 ここの壁にも、一度行ってみたい思いはある。 黒部湖を見ながら急降下。結構下り、吊り尾根にはいる。 途中でガスって来て周りの景色は見えない。いつまで歩くのという感じ! 岩稜帯の道をどこまでも歩く。 やがてかなりの急登になる。 もう3つの頂を越えてきたので、疲れも出始めている。 見えている頂が頂上かと思いきや、裏に回ってもうひと登り! やっとスバリ岳2752mに到着。
 
黒部湖を見ながら赤沢岳を下る 針木岳(2820.6m)

目の前には針ノ木岳の急登が! 承知はしているのだけれど、また登るの?!という気持ち。 だけど、越えなければ目的地には行けないよ。 またまた岩稜帯の急降下。疲れのせいか、コルまでは結構長い。そして、ガレた岩稜帯の急登だ。落石をしないように慎重に。それでもガラガラと石を落とす事もある。 やっと針ノ木岳2820・6mに到着。相変わらずガスで景色は無し。 以前4月末に来たときシリセードした谷を左に見ながら、トラバース気味に下っていく。今は少しの雪しかない。
13時5分針ノ木小屋到着。今日の行動時間は7時間20分。川野さんと永井さんに合流。部屋は個室だった。


5日目 8月10日(火)針ノ木小屋〜船窪小屋
出発5:45 ― 6:53蓮華岳7:10 ― 8:10北葛乗越8:24 ― 9:17北葛岳9:35 ― 10:05七倉乗越 ―10:27休憩10:42 ― 11:07七倉岳 ― 11:20船窪小屋

5日目にもなると、そろそろ疲れが出る頃だと、出発前は思っていたが、今のところ体調はすこぶる良い。 土岡さんとはお別れ。針ノ木雪渓を下って扇沢へ。その後帰宅の途へ。 川野さんと永井さんが加わり、6人パーティーになった。 私も、新越山荘から烏帽子小屋までは初めてのコースになる。 今日は歩行時間が5時間30分ほどで、中休みとは行かないが、体力を回復する日と設定している。
午前5時45分出発。 天気は、朝から青空で、心地よい風も吹く。 まず蓮華岳に向けて出発。のっけから急登である。だけど、もう慣れてしまった。やがてなだらかになると、ずっと先に蓮華岳の山頂が見える。 周りの景色は360度の展望。 昨日歩いてきた岩小屋沢岳から鳴沢岳の稜線と、その向こうには鹿島槍ヶ岳 後ろを振り返れば針ノ木岳 右には、今日歩く500mの急降下の蓮華の大下りから、北葛岳・七倉岳の稜線、それに続いて明日歩く、大崩壊の斜面が痛々しい不動岳から烏帽子岳の稜線が望まれる。この辺りの稜線は標高が低いので、樹林に覆われている。そして、その向こうには槍ヶ岳から北穂高岳の稜線が見えてきた。2週間前に登った前穂高岳北尾根も見える。 今年の夏は、3週間ほどの間に、登山学校の西穂高岳から奧穂高岳の縦走を入れて、3回、16日も北アルプスに入ることになる。
 蓮華岳へ向けてなだらかな稜線を進む。 砂礫の斜面にはコマクサが大群落をつくっている。 日光が当たり、ピンク色が光っている。
針ノ木小屋前 土岡さんはここから下山 蓮華岳(2798.6m)

甲斐駒ヶ岳と仙丈岳の特定で、ちょっとした論争に。見る位置で山の並びや形が変わる。 蓮華岳 2798・6m さわやかな風も吹いているよ! 蓮華の大下りは、小さい岩が積み重なりガレガレした所を急降下する。 一体どこまで下るのという感じ。だけど、こんな所にもコマクサが。それも白いコマクサが。下るにつれてハイマツからダケカンバ等の樹林になり、最後は梯子や鎖の岩稜帯の急降下で北葛乗越に到着。ここが底だ。だけど再び登り返さなければならない。かなりの急登だ。ゆっくり着実に登っていく。
いつの間にやらガスがかかり、周りの景色が見えなくなった。空模様も怪しくなってきた。
蓮華岳の大下り 七倉岳(2509m)

北葛岳から、梯子やロープのあるところを再び七倉乗越まで下り、またまた登り返す。小さい急なアップダウンを繰り返して登っていくと、道はなだらかになる。七倉岳に到着。 七倉岳2509m 雨がポツリ 急いで船窪小屋へ。10分ほどで到着。 ランプの宿で、食事もおいしく、ほっこりする気持ちになる小屋だ。喜寿を越えたお母さんとお父さん、気だての良いアルバイトのお嬢さん、ネパール人のお兄さんで経営をしておられる小さい小屋だ。
 11時20分到着で、5時間35分の行動時間であった。


6日目 8月11日(水)船窪小屋〜烏帽子小屋
出発5:15 ― 6:15船窪岳6:25 ― 7:30船窪岳第2ピーク7:45 ― 8:45休憩(谷を挟んで小屋の反対にきた)8:55 ― 9:53不動岳10:07 ― 11:07休憩(南沢岳へだいぶ登った)11:25 ― 11:40南沢岳 ― 12:00池塘地帯12:20 ― 13:15烏帽子岳 ― 14:00烏帽子小屋

10日間も風呂に入らないと身体が臭くなる。その対策を考えた。 ドラッグへ行くと売っていた。水の要らないシャンプー、30cm・60cmの幅の濡れ紙タオル、小さい濡れティッシュ。2日に1回身体を拭いた。そして、衣服も替えた。ちょっと重くなるが、気持ちよく過ごせることには替えられない。 昨日、針ノ木小屋のテレビを見ていると、沖縄近海で台風が発生したという。小さい台風だが、こちらに来たらたまらない。花折さんが聞いたラジオでは、日本海に入るような予報だ。今日は大丈夫だが、今後が心配だ。 この辺りは山の斜面が大きく崩壊している。花崗岩が風化して、砂に変わってきているからだろう。 久しぶりに樹林帯の中を歩く。キャンプ地を過ぎてどんどん下っていく。花折さんも、昨日は小屋泊まりだった。 梯子や鎖が出てくる。本当に急な下りだ。どこまで下るのだろう、底が見えない。みんなたくさん食べた。 斜面の木にはブルーベリーが実を付けている。ちょうど今が食べ頃だ。結構おいしい。
 はえのような虫が飛び回り、身体にもくっついてくる。網岡国さんはよく刺される。追っ払いながら歩く。
眼下に高瀬ダム 舟窪岳第2ピーク(2341m)

やっとコルの船窪乗越に着く。ここから平の渡しまで、船窪小屋の主人が中心になって、廃道になっていた古道を復活されたという。 昨夜、ネパール茶を頂きながら、復活作業のビデオを見せていただいた。
 下ったらまた登らなければならない。急登だ。だけどがんばって登らなければならない。船窪岳 2459m 樹林の中の頂、今回初めてだ。 また下り、登り返すと  船窪岳第2ピークがあった。 標高は2341m。 別のグループの人に写真を撮ってもらう。 ここから針葉樹林帯の中の結構長い登りが始まる。 なかなかたいへんだ。 やっと不動岳に着きました。標高は2601m。 雲が出てきて、空一面を覆うようになってきた。 台風の影響かな。 そして、再び南沢乗越までのザレ場の急降下。目の前の小さいピークを越え、少し下って、南沢岳への再びの急登が始まる。いろんな花が目を楽しませてくれるが、なかなか急だ。 見えてきた景色がガスでとうとう見えなくなった。こうなればひたすら登るだけになる。
南沢岳(2625.3m) 烏帽子岳(2628m)

南沢岳2625・3m 砂地のだだっ広い頂だ。 標識も何もない。 花折敬さんが雨が迫って来るという。見ると雲のカーテンがこちらに来る。 間もなくぱらぱらと降ってきた。カッパ着用。 この頂で今日の重労働は終わり。あと小屋まで1時間30分はあるが、もう急な登りはない。急降下し、池塘地帯に来る。大休止。再び日光が顔を見せる。変わりやすい天気だ。池でタオルなどを洗濯する。 時間も、12時を過ぎたところで、十分時間がある。重労働のあとなので、余計にのんびりした気分になる。 分岐でザックをデポし、烏帽子岳を往復。14:00烏帽子小屋到着。
今日の行動時間は8時間45分でした。時間の割にはハードだった。


7日目 8月12日(木)烏帽子小屋〜野口五郎小屋
3:20出発 ― 4:20三ツ岳4:30 ― 6:00野口五郎小屋

昨日、小屋について、テレビで天気予報を見ると、台風が日本海の本土に近いところを通って東北の方に抜けるという。小型の台風だが、こちらに来ると強風と大雨になるのは確実だ。最接近するのは12日の午後になるという。 さあどうするか相談である。予定では三俣山荘まで行く。水晶岳、鷲羽岳をとばして、とにかく三俣山荘まで行くかなどいろいろ議論した。その結果、最後の西穂まで行くには、最低水晶小屋まで行かなければならないという結論になった。台風が来る前に水晶小屋まで行くために、できるだけ早出をしようということになった。3時に起きて、3時30分出発に決定。 夕食の主菜は、今日も天ぷらだった。だけどおいしかった。 3時20分小屋を出発。真っ暗である。ヘッドランプ装着。 空を見るとたくさん星がまたたいている。今のところ台風の影響はない。 まず三ツ岳に向けて淡々と道を登っていく。 ここから双六小屋までは、滑落したりするような危険なところはほとんどない。前に黒く浮かぶは三ツ岳
 2844・6m 振り返るとテント場の明かりが見える。 三ツ岳手前で休憩。いつの間にか星はなくなり、あやしい黒い雲が覆っている。台風の前触れの雲が接近しているのだろう。
この時点では星がまたたいている 嵐の前の静けさ?

朝焼け、喜んではいられない。 三ツ岳から野口五郎岳までは、大きなアップダウンはない。雲上の気持ちよい歩きができるはずだ。 しかし、先を急ぐ。時折強風が吹く。 岩稜帯の登りになり、そこを越えると野口五郎小屋である。 この頃になると、強風と雨が降り出してきた。稜線ではもっと強い強風と雨である。これでは水晶小屋まで行くのは無理と判断。 野口五郎小屋までとすることに決定。小屋に行き、様子を見るために自炊小屋で待機。朝ご飯を食べる。最近は、弁当の朝ご飯もおいしくなった。
 午前7時小屋に宿泊の申し込み。長い1日が始まる。朝寝をして体力を回復し、午後は本を読んだりして過ごす。猛烈な風雨の中、ずぶぬれになって小屋に来る人が何人もいた。無茶な行動だと思った。


8日目 8月13日(金)野口五郎小屋〜双六小屋
5:22出発 ― 6:20休憩6:30 ― 7:45水晶小屋 ― 8:15水晶(黒)岳8:20 ― 9:33ワリモ岳 ― 10:00鷲羽岳10:10 ― 10:47三俣山荘11:15 ― 12:05三俣蓮華岳12:15 ― 13:15双六岳13:25 ―14:00双六小屋

猛烈な風雨をともなった台風も夜には去ったが、朝方まで時折強風が吹いていた。普通は「台風一過」、晴天が戻るはずだが、あまりパットしない天気である。視界はあるが、ガスっている。風もまだ吹いている。 まるまる1日お世話になった野口五郎小屋を出発。 双六岳までは、鎖や梯子などはなく、天気が良ければ、周りの景色を眺めながらの「雲上散歩」を楽しめるはずであるが、あまり天気は良くない。 間もなく野口五郎岳2924・3mに到着。 なだらかな広い頂上だ。ガスで景色は見えない!
次の真砂岳は、頂上は踏まないでトラバースする。なおも下ると、湯俣温泉へ下る竹村新道の分岐に来る。そこから小さいアップダウンを繰り返すと東沢乗越。そして、ひと登りすると、本当に小さい水晶小屋に到着。 水晶岳との分岐にザックをデポし、水晶岳に向かう。岩稜帯の道を歩くこと30分で水晶岳に着いた。岩の積み重なった小さい頂上だ。 濃いガスのため、展望は全然ない。 ここから赤牛岳を通り、黒部湖までのルートがある。読売新道という。 来年このルートを使った縦走をしようという話が持ち上がった。 分岐に戻り、だらだらと下るとワリモ乗越。そこからすぐに鷲羽岳への分岐になる。 岩稜のワリモ岳をトラバースし、なおも急登を行くと鷲羽岳に到着。 鷲羽岳2924・2m たくさんの登山者がいる。 視界が出てきた。
野口五郎小屋前 鷲羽岳(2924.2m)
今回行動食は、飴、あられ、チョコ、ドーナツ、小さい餅など菓子類中心にした。自分は、疲れるとパンが食べにくくなるので。みんな袋入りで重さは280グラム。実質は250グラム程度。1日でだいたい食べきった。しかし、量的には少なかったので、行動の最後には腹が空いた。最後の3日間は、小屋に着くとすぐにラーメンを買って食べた。 この小屋には何回か泊まったな  三俣蓮華岳への登りで、振り返れば、右から鷲羽岳、ワリモ岳、ちょっと離れた左に、小さく水晶岳が望まれる。
三俣蓮華岳(2841.2m) 双六岳(2860.3m)

三俣蓮華岳2841.2m 槍から穂高の荒々しい稜線をバックに! 出発したとき先頭の花折敬さんの歩きが早かった。 あわよくば槍ヶ岳まで行く気だなと思っていたら、案の定そうだった。 だけど、双六小屋から5時間はかかることが分かり、諦められたようである。いったん下り、丸山(2854m)のピークを踏み、再び下り、再び登り返すと双六岳。 双六岳 2860・3m 後ろの山は笠ヶ岳2897・8m 
広い広い頂上部を歩き、急降下すると間もなく双六小屋。 14時到着。
8時間40分の行動時間でした。


9日目 8月14日(土)双六小屋〜新穂高温泉
テレビで天気予報を見ると、明日は、午前中は晴れ、午後から下り坂になるということである。日本海を前線が降りてきている。 協議の結果、3時起きで3時30分出発。北穂高小屋まで行く。できれば穂高岳山荘まで。そうすれば西穂高岳まで行けるだろうということになった。 だけど、夕方の天気予報では、天気が前倒しで悪化している。 夜中に目が覚めると、屋根を叩く雨音が聞こえる。
 2時50分に起きて、花折さんのテントに行く。話をして戻る。テント場を過ぎて、小屋のあたりに来るが、真っ暗闇と濃いガスのために1m先も見えない。このあたりに小屋があるはずだが、全然分からない。困ったどうしよう、明るくなるまで待機かと思って、少し動いて再度周りを見回すと、「富山大学」の白地の看板が見えた。小屋の裏に診療所が開設されている。やっとだいたいの場所が分かり、玄関に帰り着くことができた。 網岡さんに「こら、あかんわ。こんなガスでは全然動けへんわ。行動できひんわ」 花折さんが来て、同じ考えで、行動中止となった。 雨も降っているし、明日も天気が悪いし、もう最後まで行ける見込みは完全になくなった。途中まで行って降りても、しようがない。 川野さん、永井さんといっしょに下ることにする。ちょっと残念だが天候には勝てない。無理、無茶は禁物である。
双六小屋 弓折岳(2592m)

5時30分に出発。明るくなってきたが濃いガスの中である。 花折さんが、鏡平経由ではなく、大ノマ乗越経由で下ろうという。時間的にも速いという。そうすることにする。しかし、これが大変なことであった。 雨は強くないが、寒くもあり、カッパを着ている。 弓折岳2592m 5月の雪の時に2回、下からここを目指して登った。 すごい急登だった。 ここから急降下して、大ノマ乗越に来る。「ええ!道あるの?」背丈ほどの草が茂っている。「まあ!道はある」と花折さん。登り返すのも大変なので下ることにする。草をかき分けると道があるように見える。花折敬さんが先頭なのでまかせる。足場は悪いし、大変だな。後ろの者は楽で申し訳ないなと思いながらついていく。
大ノマ乗越のガレ場 わさび平小屋

ガレ場に来ると、白ペンキの丸印が岩に付けられている。  「やっぱり、道は、道やな!だけど、全然歩いてへんで!!」 ずっと下の方まで見通しはあるが。 この後再び、背丈をこえる草をかき分けて下る。 下っていくと、左前方を人が歩いている。鏡平から下ってくる道に合流。 下りきったところには、「×」印がしてある。我々のエアリアマップを取り出して見ると、点線の道も描かれていない。何も道はない。すでに廃道になっているのだ。花折さんのエアリアマップはというと、なんと1989年版だ。21年も前の地図だ。これではあかんわ!! だけど、全行程中、この部分が一番冒険心をそそられたな。 結論、当たり前のことだが、地図は新しいものを使いましょう! あとは林道までよく整備された道を下るが、1カ所谷川を渡渉するところがあり、雨で増水して、流れが速くなっていた。トラロープが渡してあり、それにつかまりながら、転けないように慎重に渡った。足を取られて流されると一巻の終わりだ。
 林道に出る。後はのんびりと、山行を振り返ったり、山行の余韻に浸りながら、わさび平小屋を経て新穂高温泉までくだる。 小屋を後にして、15分ほど歩いたところでストックを忘れたのに気づく。あわてて取りに戻る。そのまま置いてあった。戻りは走って戻った。かなり走った。ああしんど!まあ、トレーニングになったということにしておこう。 温泉に着く手前で激しい雨が降ってきた。これで念押しのあきらめができた。10時30分頃に着いた。駐車場のトイレの前で花折さんの車が来るのを待っていると、荒井さんと浅田さんがこちらに来る。話を聞くと、滝谷に行ったが、雨で戻ってきたという。 12時に車が到着。平湯温泉で汗を流し帰京した。 予定していた最後の西穂高岳まで行けなかったのは残念なことである。長期縦走では、予備日をもうけることが必要だと分かっていたが、日程がとれなかった。 だから、やりきれるかどうかは五分五分であったし、いけなかっても仕方がないとは元々思っていた。それよりも、今まで4泊5日が最長の山行だったが、8泊9日もの長期間の山行が元気に出来たことで、今回の大縦走は、自分にとっては大きな評価の出来る、「自分史」に大きな足跡を残した山行であった。らくなん山の会にとっても、歴史に残る一つの重要な山行であったと思う。 花折さんも網岡国さんも、たぶんそう思っていると思う。 
自分達にとって、新たな地平が切り開かれたので、来年は、南アルプスの大縦走、という話も出ている。
白いコマクサ


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