北アルプス 剱岳〜西穂高岳 大縦走

その二

山行日 2012年8月9日(木)−16日(木)  報告:花折敬司

<8月13日(月)雨 強風(17〜18 m/s)> 行動4時間10分
行 程 双六小屋(5:20)――千丈乗越(8:30)――槍ヶ岳山荘(9:30)

ガスの中の樅沢岳 携帯の天気予報で今日の天気(雨と風速18m位の強風)は分かっていた。出がけから雨がシブシブしていたのでカッパを着ての出発となった。恐らく休憩したり行動食を口にすることはほとんど無理だろうと予想していた。
強風を避けハイマツの中で休憩高度を上げるに従って風はどんどん強くなってきた。樅沢岳で小休止。頂上は写真の少し上になる。ここから硫黄乗越や左俣岳を越えるのだが、雨とガスと強風で確認できなかった。と言うより地図をしっかり見る余裕さえなかったというのが本当だろう。
強風でふらつきながら後から地図を見ての事だが、多分硫黄乗越を少し越えたあたりになるだろうと思われる。這い松に入る所が少しだけあ槍ヶ岳肩直下を行くり、ここより先はまた吹きさらしの稜線に出る所で、前後から人が来る気配は無かったので道にザックを置いて休憩をした。「これから後、2時間半くらいは休憩もできないから行動食と水をしっかり取るように。」と指示した。(写真)
 地形の関係だろうか、風が後ろから我々を押す箇所があった。押されて前につんのめるようになるのを必死でこらえる。らくなんの3人は冬山も通じてこのような強風での行動は多分初めての経験で、怖さを感じるとともに冬山に向けての良い体験となったと思う。
 「荒天での行動はしないと常日頃から力説している花折と、行動が矛盾するではないか。」と言われる小屋でホッとしながら向きもあるかとも思う。しかし、それは現地での判断に任されるべきだろう。この日、私は「これくらいの風なら、この5人にとっては問題無し。」と判断したのだ。私の今までの体験上、夏山でも経験したことがある程度の強さの風だったのだ。もちろんこの5人でなければ躊躇なく停滞していただろう。
 予想通り、槍ヶ岳山荘までは休憩無しとなった。それもあってコースタイムより40分も早く着いた。私としては槍の頂上を踏んで終了としたかったが、さすがに誰も賛成しなかったのでここで行動を終了し、小屋に宿泊の手続きを取った。
 
<8月14日(火)雨 強風(12〜13 m/s)> 行動7時間45分
行 程 槍ヶ岳山荘(6:00)――南岳山荘(7:58)――大キレット最低コル(10:00)――北穂高岳小屋(11:23)――穂高岳山荘((13:45)

永井さんは槍沢下山 「気を付けて」南岳 今日も雨。風も多少強い予報。南岳まで足を延ばし、その状況によって奥穂まで行こうと、槍ヶ岳山荘を出る。らくなんの永井さんとはここで別れることになり、予定通り槍沢へ下山していっキレット最低コルた。我々は順長谷川ピークへの下り調に南岳まで来たが、ここに留まる理由はない。岩は濡れてはいるが、これくらいならキレット越えは問題ないと判断して、穂高岳山荘までとする。長谷川ピークまでは下りが続く。ここの少し下の鎖のついた一カ所、体を外に出しながら足場を探さなくてはならない所があり、濡れているとちょっといやらしいと感じる。
飛騨泣きを登る そこから最低鞍部のA沢のコルまではすぐだ。このあたりを指してキレットと言う。飛騨泣きを登るここから飛騨泣きと呼ばれる急登を北穂高小屋まで登ることになる。鎖もしっかり整備されているので慎重に登れば問題はない。300mほどの高度差をかせげば北穂高小屋に出る。天気の良くない日の小屋はありがたい。ここで温かいラーメンを食べる。本格的なラーメンでチャーシューも美味しい。温かいものを腹に入れるとホッとする。北穂高の頂上北穂高小屋前にては小屋のすぐ裏にある。
北穂高岳頂上 再び小雨の中を出発し、涸沢岳を目指す。鎖場もあり気が抜けないが、昨日今日で濡れている岩場歩きにも慣れ、直下のちょっと長い鎖場を越えると涸沢岳の稜線に出る。五月にはここで遭難事故があった。九州の労山の仲間が亡くなった。涸沢岳へ
雨の中やっと穂高山荘へ到着 頂上から小屋までは20分程度下るだけ。2時前には穂高岳山荘に着くことが出来た。二日間続いた雨で、お盆と言うのに宿泊客は少なかった。我々は素泊まりで泊ることにした。




 
<8月15日(火)雨 強風(12〜13m/s)>
行 程 <停滞>

穂高山荘にて沈 一日中雨。気温も低く、昨日のように途中に小屋もない。今日は停滞を決め込む。
穂高岳山荘は泊らない人でも全く拒まない。ずぶ濡れになった人が入ってきて、受付の前のテーブルでコンロを焚いて食事を作っている。テントの人もここにきて食事だけ作って食べていく。こんなありがたい、嬉しい小屋は他にはない。さすが近代山小屋の発祥だけある。
私達も、ここで昼食を作ったりスープを作ったりして過ごす。昨日は1階、今日は2階の部屋となる。一日本を読んだりしてゆっくり過ごす。この停滞で、焼岳までの縦走は断念することにした。明日は西穂まで縦走し、ロープウエーで降りて、中尾温泉「望焼館」でこの3年間の打ち上げをすることにして、電話予約をした。
この小屋は連泊すると2000円安くしてくれる。これもうれしい。花折二人も今夜は小屋食に変更した。献立の種類もいろいろあり美味しかった。
 
<8月16日(水)雨のち曇りのち晴れ> 行動8時間55分
行 程 穂高岳山荘(4:50)――奥穂高岳(5:35)――ジャンダルム(6:42)――天狗の頭(9:00)――間ノ岳――西穂高岳(10:45)――西穂山荘(12:43)――ロープウエー駅(13:45)

雨の中 緊張しての出発奥穂高岳頂上 天気予報は6時以後は晴れ。それを信じて小雨の中を出発する。
 奥穂高までは45分ほどで着く。多くの人が日の出を目当てに登ってきていたが、それは望むべくもない。記念写真を取ってすぐに出発する。
 馬の背を通過馬ノ背まではすぐだ。4人ともこのコースを今回のように逆に取ったことはない。花折敬が以前ジャンダルムまでを往復したくらいだ。
 奥西、網岡は3週間前に初級登山学校の講師でここを西穂から縦走してきているが、今日のように濡れた岩場を下ることにはかなり緊張しているらしい。これから西穂高まで、この緊張が延々と続く。
 ロバの耳へは岩場の登り。どこにルートがあるのだろうと思われるような所が続くが、実にうまくルートロバの耳辺りを通過ジャンへ馬の背から下る取りがされていて、何回来ても感心してしまう。ガスでロバの耳は確認できなかった。
 これを越えるとジャンダルムの手前まで若干の下り。その下りでやっと少しガスが晴れてきて、突然ジャンダルムが目の前に現れる。直登するルートもあるが最近はほとんど登られていないようだ。我々もトラバースルートをジャンダルムの頂上で取る。二組のパーティーが先行していて、既に頂上から降りて先を急いでいた。
 ジャンダルム頂上は我々だけだったが、再びガスの中となりジャンのトラバース眺望は全くなかった。ジャンの天使をカメラに収めて先を急ぐ。
 天狗のコルまでは大筋下りとなる。鎖場が続くことはどこも同じだ。天狗のコルからは岳沢への唯一のエスケープルートがあるが、ガレ場だ。ずっと以前下ったこともある。ここから少し登り返すと天狗ジャンダルムの頂上の頭に着く。
 頭からは間天のコルへ下るのだが、最後のスラブ状が濡れていると本当にいやらしい。乾いた登りなら意識することもなく通過するのだが、長い鎖が無天狗のコルへの下りければロープを出したくなる。何年前になるか、ここにテントを張ったこともある。一張できる位のスペースがある。その時は次の朝、このスラブにベルグラが張っていて、融けるまで時間待ち天狗岳した。懐かしい昔話だ。
 間ノ岳を越えて、赤岩岳の鎖場を登ると、天気ならすぐ目の前に西穂高が見えるはずなのだが、全く展望はない。もうすぐかと思っているうちに、たくさんの人がいるピークに着く。そこが西穂高岳だった。何ともあっけない到着だった。
間天コル直前のスラブ間ノ岳へ到着ここからはこれと言った悪場もなく、ピラミッドを通過して、独標へ到着した
ここにきて、ジワーッと長い縦走の感動が湧き上がり4人を支配していた。4人で「バンザーイ」をして、最後を締めくくった。
 丸山下まで来た時に、やっとガスが晴れ、4日ぶりの風景が見とうとう西穂高岳へられた。何と新鮮なことか。この大縦走を最後に祝福してくれているのだろう。
 この後、西穂山荘からロープウエーに下って、中間駅で「望焼館」のおかみさんのお迎えを得て、8日ぶりの湯ピラミッドを通過にたっぷりと浸って垢を落とし、飛騨牛のついた夕食を堪能した。3年間で南北アルプス最後のピーク独標でバンザイを完全縦走したことに、4人とも大きな満足を得た打ち上げとなった。さて、これから後はどうしたものか、悩ましい4日ぶりの風景… バックは西穂高岳


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