穂高集中 バリエーション編

穂高 池巡りと登攀(その1)

高年パワー(平均年齢61.5歳)全開!
報告者:花折敬司
山行日 2013年8月9日(金)〜14日(水)
参加者 花折敬司(CL)、花折忍<明峯>、奥西一博(SL)、網岡国江<らくなん> 計4名
コース 明神―ひょうたん池―明神―横尾―涸沢―北穂池―横尾本谷カール―天狗池―南岳―キレット―涸沢―前穂北尾根―奥穂高岳―横尾―上高地―岳沢―コブ尾根―天狗のコル―岳沢―上高地
 今回は、前年半分しか行けなかった穂高〜槍の裾にある4つの池巡りと、4という数字に合わせて4つの岩稜を登攀して戻ってくるというルートを設定してみた。池と岩稜は全く関係ないが、そのようなバカげた企画があってもいいだろう、くらいな気持ちで取り組んだ。1日目からメンバーの体調不良で計画通りにはいかなかったが、非常に内容の濃い、激しい山行となった。地図のルートを指で追いながら報告を読んでみてほしい。

  <9日(金)晴れ>
5:47上高地発 − 6:30明神池 − 10:15ひょうたん池 − 11:00奥又白池への取り付きを確認 − 14:30網岡体調今ひとつで奥又白池への縦走を中止し下山――16:30横尾 テント泊          
<行動時間 10時間40分>
 
 平湯温泉の宝タクシー駐車場で仮眠し、5時前にタクシーに乗る。宝タクシーを利用すると駐車場代はタダになる。
ひょうたん池への入り口 明神橋 長七のコル 網岡さんの調子上がらず
上高地はすでに多くの人でいっぱいであった。朝食をとりながら準備してすぐ出発する。明神橋を渡って、下宮川谷に入っていく。1ピッチ目は良かったが、2ピッチ目から網岡さんのピッチが上がらない。どうも体調不良の様だ。宮川のコルを過ぎてからは網岡さんの足が攣りだす。春山でひざを骨折して、トレーニングも出来ていなく、調子が出ないようだ。ひょうたん池から70mほど上がって、2370m位から奥又白へとトラバースしていくのだが、ここで奥西さんから、このまま進んでも、茶臼のコル、X・Yのコルへの登りは無理とストップがかかる。ここの岩壁をトラバースしてしまったら後は行くしかない。奥又白池までしか行けなかったら、明後日に北鎌尾根を一緒に登ろうと計画している宮井さんと村上さんに合流するのは不可能になる。そこで、我々は、一旦下って明神から横尾へ行き、網岡さんの体調を見てあす朝3時に出て、涸沢から北穂池を経て天狗池から水俣乗越、北鎌沢出会いへとの強行軍をすることにした。明神から横尾へ行き、テントを張る。
ひょうたん池 奥又白池へのトラバース地点

  <10日(土) 晴れ>
2:45発 − 4:00本谷橋 − 5:55涸沢ヒュッテ荷物整理しデポする − 7:00発 − 8:33北穂高岳東稜下 − 赤い印に助けられる − 10:20北穂の池上部 − 天狗池へのルートを探す − 12:00村上さんと交信 ルートが見つからないため池でテントを張ることに決定
<行動時間 10時間15分>
 テント泊7日間の予定なので荷が重く、早朝とはいえ昨日の疲れも残り、涸沢までエアリアのコースタイムよりかかった。3日後にはここに戻ってくるので、不必要な品物は出来るだけデポしていこうということになり、一人5kg位軽量化した。
 北穂東稜の取り付まで登り、そこから反対側へまわり、道なき道を高差350〜400m位下ることになる。これがなかなかの急な下りで、途中の石にいくつか古い赤丸があったりするのを目印にドンドン下る。やがて藪こぎになるが、おかしいということで戻ると、左側の深い草の中の石に矢印があるのを奥西さんが見つける。それに導かれて下るが、うき石が多く、一人が下り終えるまでは次の者は待機して下る。この矢印が無ければ、ここを下ることにはかなり勇気がいるだろう。下ってからさらに左に行くと、やはり古い黄色い矢印があり、それに従っていくと北穂池の上のガレ場に出る。これを下っていくと一番大きな池の上に出る。我々は時間が無いのでこの池には下りずに先に進む。
ところがそこから先のルートがはっきりしない。奥西さんが、資料の地図を国土地理院の地図に写してきているのを見ると、池まで下って、それを真横へトラバースすれば行けるはずだということで、3の池に下る。ところが、これがミスの始まりだった。確かに地図上ではそうなのだが、その元になる地図は、多分、山行後に、この辺りだっただろうということで書かれた可能性が高く、正確さには欠けるだろうとは分かっていた。しかし、基準を持たない我々はそれに頼るしかなかった。下ってから、色々探してみるが、猛烈な藪で進みようがない。
草の中に見つけた矢印
 登ったり下ったりしながら何度も試みるが、突破できそうもない。昨日、800数十m登り、それを下ったことによる疲れが皆に残っていて、しかも今日は早朝3時前からの行動となっていて、全員、疲れ果ててしまった。網岡さんの体調も今一で、時間は早かったが、適当な広場もあるので、今日はここにテントを張ることにする。北鎌尾根の2人とは無線で交信し、合流できない旨を伝え、申し訳ないが2人で行ってもらうことにした。
池の傍の素晴らしいロケーションにテントを張り、ゆっくりする。そこから行くべき方面を見ると、何となく藪が切れていそうな個所があるのが分かる。あくまでも切れていそうなというだけだが、それしかないだろうということで、明日そこにトライすることとする。1日延ばすだけの食糧を持ってきていなかったので、北鎌をカットし、我々は明日、なんとか強引にでも藪を突破し、横尾本谷カールへ入り、そこから横尾尾根へ這上がり、天狗池に下って、登り返して南岳からキレットを越えて涸沢に帰ることにした。
第3の池をテントサイトへ 今日のネグラと北穂池
 このテントサイト、不幸中の幸い、棚からぼた餅。我々だけの素晴らしいひと時を提供してくれた。機会があればぜひ一度、行って泊まってみることを勧めたい。一回で4つの池はつなげなかったが、昨年秋から、これで全てを繋ぐことが出来た。池に関しては、まあ良しとしよう。

  <11日(日)晴れ>
 5:00発――5:50ブッシュ帯抜ける――6:45南岳南東稜コル――草付きを下りブッシュを抜ける――7:18〜36横尾本谷カール―― 8:26〜40横尾尾根稜線 荷物を置き天狗池へ―― 9:00天狗池で逆さ槍を見る――9:50〜10:05稜線に戻る――11:13南岳―― 20〜32南岳小屋―― 12:25長谷川ピーク手前――14:30〜45北穂高岳――16:10涸沢ヒュッテ デポを回収 テント泊
<行動時間 13時間10分>

 北鎌のどこかでテントを張れば予定通りにはいくが、かなりな無理が生じるので、北鎌はカットして、昨日確認した通りのルートとする。これで2つの岩稜(北鎌と北穂東稜)は無くなってしまった。その分1日余裕が出来た。当初、重荷を背負って前穂北尾根を越えるつもりだったが、危険も伴うということで、軽荷で北尾根を登り、奥穂から涸沢に戻り、そのまま横尾へ下り、次の日を移動日として岳沢に入り、その次の日にコブ尾根をやることに決定する。予定をかなり変更することになるが、重荷で岩稜をというリスクを考えて、安全を期することにした。
 
 
 さて、昨日確認した、池から雪渓を渡って一段上の斜面に入る。どうやら藪が切れていそうだということで踏み込む。その通りで、その上部岩壁の基部まで斜上する。ここから難なく次のガレ沢に入り、その向こうの藪に出た。ここは強引に突破するしかないが、その幅は3〜40mとそう長くは無い。灌木は雪で下向きに倒れているのでかき分けにくいが、少しでも潜れそうなところを選んで突破する。
これを出ればもう藪こぎは無い。南岳南東稜のコルに続く斜面に出て、テント場から見ておいた、一筋だけ藪の薄そうなところのあるルンゼ状に入る。これも予想通りで、流水跡だろう所にだけ、木が生えていない。これをぐいぐい登るとコルにつく。ここから下れば横尾本谷カールに出ることが出来る。振り返って来し方を見た。先ほどの池から岩壁下部のルートは、ここから見てあれしかないことが分かる。大正解だったのだ。
 少し下ってから、カールを横切るために左斜めに下っていく。といっても背丈もある草をかき分けながらだ。時々クロマメノ木や草でスリップしながらドンドン下っていく。コバイケイソウなどの草をつかんで支点にしながら、色々な草花も踏み倒さなければならない。心の中で花の精に「ごめんなさい。」と言いながら、どれほど踏み倒したことか…。やがてカールの中心部に到着すると、草も無くなったので、ゆっくり休憩する。下を見ると横尾本谷を2人の人が登って来ていた。最接近した所で挨拶を交わし、我々は横尾尾根へと向かって長い登りを着実に登った。登りやすそうなところをただひたすら登れば稜線に出る。秋の紅葉時期にこの谷を登ろうと話し合う。
 尾根の反対側の天狗原を見下ろすと、小さな池が一つ見える。他はまだ雪渓の下だ。良く写真で見る、槍が映った池も雪渓の下の様だ。登山道まで少し登り、合流した所に荷物をデポして、水だけを持って池まで下っていく。何グループもの人たちと出会う。槍沢の様にメジャールートではないとはいえ、この雰囲気の良さに、訪れる人は多いのだろう。
 一つだけ出ている小さな池にも槍は映っていた。私達はそれを写真に収めたり、又槍を挟んで映るようにして記念写真を撮ったりした。池に映る槍と本物の槍の関係がなんとも言えず格好良い。
その後、水が流れているところで持ってきた水筒に水を汲んだりして、しばらく休憩し、荷物の所まで登り返した。後はひたすら南岳までの登りをこなすのみ。大抵ならこれで1日の行動は終了というところだろうが、我々は、まだキレットを越えて涸沢まで戻らなければならない。小屋でジュースだけ飲んで、キレット越えへと急ぐ。ここでのこのルートの解説は省略するが、ほとんどの人が目的とするルートも、我々にとってはただの帰り道というだけだ。最低鞍部までは急な長い下り。そこから長谷川ピークを越えてA沢のコルへ。ここで昨日泊まった北穂池へのルートを確認したりして、しばし休憩。
先ほどからヘリがホバーリングしている。何かあったようだ。対向する人に聞くと、転落事故があったとのこと。それも何でもない所で。
 ここからいよいよ急な登りの飛騨泣きに向かう。すぐ、レスキューの人たちに出会った。今現地から槍へ戻っているとのこと。「ご苦労様。」と声をかけて、私達は北穂へ向かう。
A沢のコルから北穂池へのトラバース斜面昨年は雨とガスの中を登ったが、今回は天気がよく快調だった。北穂で聞くと小屋のすぐ下のガレ場で転落したようだ。「えっ、こんな所で。」というような所だった。一旦立ち上がったが、再び転がって200mは落下したようだ。後で分かったが、やはり死亡事故となってしまった。我々も気を引き締めなくては…。北穂の小屋から、我々のテントサイトが真下に丸見えだった。「キジ撃ちも見られていたかも。」などと言うほど近くに見えた。
北穂南稜を涸沢へ下ること約一時間半。デポを回収し、テント場の石を少しでもと整地してテントを張り、本日の行動を無事終えた。        
――次の号に続く――



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