穂高お池めぐりと前穂北尾根・コブ尾根

奥西一博
 花折夫妻、網岡国さんたちと夏に長期縦走に取り組んで4年目になる。最初の年は、白馬三山から双六岳までの9泊10日の山行(途中台風に遭遇し、停滞を余儀なくされ、穂高連峰の縦走ができなかった)。次の年は、南アルプスの縦走。黒戸尾根から甲斐駒に登り、仙丈、塩見、荒川、赤石、聖を経て光岳までの7泊8日の山行。昨年は、馬場島から剱に登り、立山、薬師岳、黒部五郎岳、双六岳から、西鎌尾根、北穂、奥穂、西穂までの6泊7日(1日は雨で停滞)の山行。この3年で、日本アルプスの縦走コースを踏破できたので、今年はどうするんだろうと思っていると、花折さんがとんでもない計画を持ち出してきた。昨年からの積み残しの4つのお池めぐりをして、北鎌尾根から槍ヶ岳、北穂東稜から北穂高岳、前穂北尾根から前穂高岳、コブ尾根と4つの難ルートを登攀するという。とんでもない計画で、それだけにやりきったらすごいことだと思った。
 コースの8割はバリエーションルートなので、ルートファインディングをしながらの歩きになるし、ほとんどが岩稜帯のがらがらの所を登るので、浮石だらけで大変である。本当に神経を使う。
 実際の山行は、計画通りには行けなかった。北穂池から先の道が分からず、探しまくったが見つからなかった。その日は、北鎌沢の出合まで行くことになっていた(そこで村上、宮井の2人と合流することになっていた)が、たどり着ける見込みがなくなり、仕方がないので池のほとりでテントを張る。
 テントを張って、進む方向を見上げると、草つき、樹林の中に行けそうなルートが見える。翌日行くと、そう困難無しに通過できた。通過できたが、時間的に無理なので、北鎌尾根からの槍ヶ岳はカットとすることにした。
 ザックの重さは20kg近くになった、テント生活に必要なもの、衣服、食料、登攀具、水2リットルなどで。計画は、こんな荷物を背負っての前穂北尾根、コブ尾根の登攀であった。実際は、コースを変えて荷物を軽くしたので登攀できた。その結果として、西穂まで行くのはできなかった。
 このように計画通りに山行はできなかったが(バリエーションルートになると、このように臨機応変に対策を取らなければならないことが出てくる)、これだけはやりたいと思っていた、北穂池から天狗池のコース、2回目の前穂北尾根、初めてのコブ尾根登攀ができた。計画通りでなかったが、自分にとっては、大満足の山行であった。66歳になってもこれだけのことがやれた自分に誇りを持とうと思う。まだまだ面白い、やりがいのある山行をして行こうとの思いが深まった山行であった。さあ、次の山に向けて、またまたトレーニングを続けよう!
 山は天気というが、今回は本当に好天気に恵まれた。雨の予感はゼロ。何の心配もなく明日の計画が立てられた。雨が降れば登攀はできないことが多いので、最高の条件で登攀ができてよかった。
 また、こんな山行ができるのも、花折夫妻、網岡国さんという、山を愛し、山への挑戦をし続ける素晴らしい仲間と登り続けられるからである。山では思ったことが何でも言い合えることはとっても大切なことである。それが安全登山の大事な要素である。

1日目 8月9日(金) ひょうたん池〜横尾
5月に雪崩に遭ったところを通過。その時、夏道はどこかわからなかったが、夏道に沿ってだいたい歩いていたことが分かる。
この辺りからひょうたん池までは踏み跡ははっきりしない。前方のコルがひょうたん池。

遅れ始めた網岡さん相当苦しそう!
ひょうたん池に着いた。昨年の10月は紅葉真っ盛りだった。
この後涸沢まで行くのは困難と判断。下まで降りて横尾まで行くことにする。
前回降りたところを確認するが、谷への降り口がはっきりとわからなくなっていた。

2日目 8月10日(土) 横尾〜涸沢〜北穂池
 2:45横尾出発、6時前に涸沢へ。たくさんのテント。

3日後のはまた戻ってくるので、いらない荷物をデポする。
正面奥が北穂東稜。
 北穂南稜を行き、途中で東稜のコルをめざし、ガレ場を登る。



    
 写真では緩やかな斜面のように見えるが、実際はかなり急登。落石しないように気を付けるが、それでもたまにガラガラと岩屑を落とす。自分も一緒に落ちないように、慎重に慎重に!






 東稜のコルを越えると下方に北穂池が小さく見える。
 急な斜面を下る。今年はコバイケイソウの当たり年か、どこを歩いても大群生であった。
 そんなお花が目を楽しませえくれるが、まだまだ困難が待っている。


草の中を下っていくと、花折さんが崖で行けないという。上に戻る途中にかすかな踏み跡らしきところが。その先の岩に、かすれた白ペンキの矢印が。だけどその先は急ながらがらの下り。普通だったらいけないと判断するところだが、印があり、ほかに下るところが見当たらないので下る。岩を落とすので、一人ずつ安全なところに行ってから通過。

 その後もガレ場を下り、やっと緩斜面に着く。
 そこは雪渓が広がっていた。
 前方は南岳東南稜、左手の稜線は大キレットの一部。我々は右手上のコルを目指す。
 しかし、ここから前方の横尾本谷へのカールへの道が分からない。  
 
地図では岩稜と岩稜の間を抜けることになっているが、どこを見ても崖になる。あちこち探すがわからない。疲れと目的地まで行けないことがはっきりしたので、ここでテントを張ることにする。池の横にちょうど良いテントを張る場所が見つかり、近くに水場があり、北穂の小屋が急斜面の岩場に建っているのがそこに見え、遠くには常念岳が秀麗な姿を見せている。周りはお花畑広がり、雪渓も広がり、もちろん我々だけである。夜は満天の星。最高のテント場である。写真は、常念の横からご来光があがってきた早朝。
 テントを張って進む方向を見ると、上の岩稜帯のまだ上に岩稜が見える。地図と比べると、我々は下の方の岩稜の間を探していたことになる。2つ目と3つ目の間に抜けそうなところがあった。翌日行くと越えられた。

3日目 8月11日(日) 天狗池〜大キレット越え〜涸沢
 北穂高岳と頂上にある北穂小屋をバックにしながら横尾本谷カール、南岳東南稜のコルを越えて横を右またカールへ。ずっとガレ場の昇り降りと、申し訳ないがお花をなぎ倒しての昇り降り。






横尾右俣。背丈ほどある草の急斜面なので地面がはっきりわからない。何回もつるっと滑る。
見えている尾根は横尾尾根。槍ヶ岳への冬のルートの一つである。そのコルを目指す。

横尾尾根に荷物をデポし、天狗池へ。大きい池はまだ雪の下であったが小さい池に逆さ槍が映っていた。
このルートは初めてであったが、多くの人が歩いている。なかなかよいロケーションの所だった。


この後、横尾尾根を稜線まで登り、南岳を通過し、南岳小屋から大キレットへ。写真はこのルートの最大のハイライト「長谷川ピーク」。ここを越えると急登の「飛騨泣き」そしてやっと北穂小屋と北穂高岳。ここから我々は涸沢のテント場まで南稜を下る。
多くの人が大キレット越えを目標にしているのに、我々は帰り道に使うという、何と贅沢な山行。

4日目 8月12日(月)前穂北尾根〜前穂高岳〜横尾
                                          5峰から見た4峰
             4峰の登り                       4峰からの3峰
            3峰登り上部                      前穂高岳に着く
 5峰の上部、5峰は簡単な岩登り。特に問題なし。前方に4峰とその右に3峰。
 今回の前穂北尾根は2回目ということあり、気持ちにゆとりを持って挑戦することができた。ルートとしてはさほど難しいことはなく、間違わない限りは、困難に陥ることはない。ルートどりによっては、もちろん難しくなったり易しくなったりする。我々は前回と同様、4峰、3峰とも上部で涸沢側にルートを採った結果、難しいルートを行ったようである。 我々は3時30分にテント場を出発したので、先頭で登ることができた。そのため、4時間で前穂高岳に到着することができた。

5日目 横尾〜上高地〜岳沢小屋
 この日は移動日。それでも、小屋についてコブ尾根の取り付きを見に行ったので、行動時間は7時間30分ぐらいになった。

6日目 岳沢小屋〜コブ尾根登攀〜天狗沢下降〜上高地
 下見の時に見つけた取り付き場所。シュルンドと言って、雪渓と斜面の間に穴がいていると斜面に渡れない。落ちたら多分終わり。記録と同じ場所が渡れた。(右の写真)斜面に取り付き、急なルンゼを稜線まで登る。もちろん岩を落とさないように。振り返ると上高地が見える。







稜線に出ると、正面に前穂高岳からのつり尾根が高いところを横に走っている。歩いている人も小さく見える。
目の前のピークをハイマツの中を越え進んでいくとコブが前方に見える。
 数メートルの崖の所に来たが、手掛かりが十分あり難なく降りる。

 こんな岩稜帯を歩いたり、斜面をトラバースしたり、急登したりして、コブの基部に到着。
 正面右に支点やシュリンゲがかかっていた。ここを登れないこともないがちょっと難しそう。 我々は左手の小さいハイマツのある所から奥西がリードして登る。特に難しいことはなし。



プルージックでハイマツの中を登ってくる、網岡国さんと花折忍さん
 奥西が確保








  思いのほか簡単に核心部を登り、懸垂下降地点に来る。支点が3か所もあり、真ん中の支点を使うことにする。そのため、5mほど下降。そこから約20mの懸垂下降。




懸垂下降。かっこよい懸垂下降の写真を撮ろうとするが、なかなか撮れない。
八ツ峰で、奥西が懸垂下降をしているのを花折さんに撮ってもらった写真をこえるものがまだ撮れない。
まあ、この写真も良いが!




  登って下ったコブを上部から振り返ってみる。
 コブの頭はジャンダルムのすぐそば。
 稜線を天狗のコルまで下り、ガレガレの天狗沢を下り、お花畑を通って岳沢小屋へ。
 この後平湯温泉の「栄太郎」に泊まって15日に帰京。


穂高岳お池巡りと前穂高岳・コブ尾根山行に参加して
 網岡W
 アルプス縦走を始めて今年で4回目になります,リーダーの花折さんからの計画書は穂高連峰の四つの池と四つのバリエションル-トでした。
 昨年行けなかった北穂池,天狗池それに以前から憧れていたコブ尾根は如何にしても行きたいル-トでしたが、今年は素直に喜ぶ事が出来ませんでした。と言うのは、私の体調がもう一つで思うような山登りや岩登りが出来なかったのです。
 まずは病院通いから始めて、腰やひざに負担のかからないようにして、悪いなりのトレーニングをしたり・・・・・・・・・、ストレッチやクライミングも無理せずにやりました。
 しかし、時の立つのは早いもので、アット言う間に出発の時期がやって来ましたが、もちろん体調不良のままの参加となってしまいました。当然初日から皆に迷惑掛けてしまいました、甘い考えでの参加の結果ではありましたがその見返りは当然の結果となり反省しきりとなりました。行きたいと行けるのとは違うと言う事を実感させられました。
 しかし、皆には迷惑を掛け、全日程とも余裕はなかった私ではありましたが、皆さんに支えられながらの山行でもリタイアすることなく、四つの池もコブ尾根にも無事行ける事が出来たことは私なりには満足の山行でした。
 北穂の池でのテント泊 満点の星、常念岳の優雅な姿 天狗池での逆さ槍 コブの頭からみたジャンダルムの雄姿 キレット越え 前穂北尾根などなど・・・・・・・・・。
 急登、又急登 深いブッシュのかき分けの登り下り 落ちそうなゴロゴロ浮石や道なき道の登り下り等、苦しくつらい思いもし、又、怖かった登攀ではありましたが、素晴らしいリーダーと仲間に出会えたからこそ味わえたやりがいのある山行でした。
 花折さん 忍さん 奥西さん有難うございました そしてお疲れ様でした。
 このメンバーと山行出来た事は本当に幸せな事でした。



山行報告に戻る

TOPに戻る










inserted by FC2 system