明神岳東稜登攀・本峰〜5峰縦走の感想

                                                      報告:奥西
この数年来、花折夫妻、網岡国さん、奥西の4人が核になり、時々にメンバーが加わり、北アルプスや南アルプスの長期縦走を計画し、主なルートを踏破してきた。その後、バリエーションルートに興味が移り、剱岳の八ツ峰、前穂北尾根、北アルプスのお池めぐり、コブ尾根に登ってきた。ルートファインディングをしながら登り、時にはロープを出しながらむずかしい場所を越えて登っていく緊張感は、自分の山への挑戦を実感させる。
この緊張感は、胸が高鳴り、心臓がドキドキし、頭がカッカして感情が高ぶるような状態ではない。これから登る岩をじっくり見て、自分の持っている技量とつき合わせて、乗り越えることができるのかどうかを冷静に判断するという緊張感である。ルートはどうとればよいか、手掛かり、足がかりはあるか、このホールドは自分の力量で登れるのか等を、岩をしっかり観察して、自分と対峙させて決定していくという、岩と自分との対話が生む緊張感である。




ひょうたん池から三本槍、その奥が前穂高岳。写真左のピークを目指してのぼる。



草に隠れた急登の薄い踏み跡をたどり、東稜尾の下部を登る。
 
 このように全身全霊を使ってやり遂げることができると、その達成感は誠に大きく深い。
今回も、花折さんは、コースとしては面白いが、これは大変だろうという計画を提案してきた。それは、涸沢から前穂高岳の北尾根を基部から6峰まで登り、2年前に歩いたコースの逆、北尾根の5・6のコルから奥又白池、ひょうたん池まで歩く。そこから、みんな初めての明神岳東稜から本峰に登り、岳沢ヒュッテに下り、そのあと、奥穂高岳南稜を登り、最後に畳岩に登るという壮大な計画であった。




いよいよ岩稜帯に入る。岩だけでなく、草やハイマツもつかんで登る。
斜度は40度を越えている。立ってはほとんど登れない。




登ってきたルートを振り返る。下の川は梓川。ピークは長七の頭(2320m)。ピーク(登れない)から左に斜面を下ると「ひょうたん池」。

 しかし、計画通りには実施できなかった。というのも、台風11号が通過したために、8月9日〜10日が取りやめになり家で待機した。11日から行動して上高地に入ったが、好天気になると予想した12日が途中から雨になり、ひょうたん池まで行ってテント場まで戻らざるを得なくなった。その結果、日程の関係で明神岳東稜から本峰・5峰への縦走だけということになってしまった。



岩稜の取り付きから中間のピークまでは第1階段と言われている。中間のピークまであと少し。
ロープを2回出すなど、なかなか厳しい登りであった。





正面の本峰のピークが見えてきた。その左奥が2峰。真ん中に核心部のバットレス。

だが、これだけでも大満足であった。上高地から見上げると鋭い尾根を天空につき上げている明神岳、奥穂高岳から見ると、いくつもの岩稜のピークを連ねて上高地に向かって下っていく明神岳。西穂高岳からも思ったより近くに鋭鋒を連ねているのが横向きに見える明神岳。このような明神岳、機会があれば登ってみたいと誰もが思うだろう。





バットレスへの登り。ここは、落ちたら終わりなのでロープを出す。




バットレスを奥西がリード。登ってくる花折忍さん。

 昨年の4月末に、他のメンバーと残雪の明神岳に挑戦したが、雪崩に遭い、ひょうたん池にもいけずに敗退。もう行くことはないだろう。見るだけの山に終わってしまうだろうと思っていた。



バットレスを越えると、踏み跡がほとんどなくなった。少しまっすぐ登る  
  と正面に岩壁。そこを左から超えると間もなく明神岳本峰(2931m)
  写真のピークは2峰。ピークに人影が。この人たちは懸垂下降で!我々はどこを登るんだろう?


慎重に検討してルートを決定。まず、奥西がリード。途中のテラスでピッチをきる。2ピッチ目は花折さんがリード。写真は2ピッチ目の登り。2峰の出だしは、もし落ちるとただでは済まないので慎重になったが、登りは難しくはなかった。

 こんな心境にいた中で、計画をしていただいたのはありがたかったし、結果的に計画の一部しか達成できなかったが、自分にとっては明神岳に登れただけでも大満足であった。
 また、自分の山人生に深く思い出に残る1ページが加わった。






2峰の下りからの3峰、4峰、5峰






下ってきた峰。右から本峰、2峰、3峰。3峰は双耳峰に見える。

 2峰からは特に難しい所はない。5峰から南西尾根を下る。途中急な下りのやせ尾根が長く続く(ロープが設置)。14時間20分の行動時間であった。




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