ハシゴ(重太郎新道)



北アルプス 奥穂高岳~前穂高岳



山行日 2016年9月2日(金)~ 4日(日)
山名 奥穂高岳(3190m) 前穂高岳(3090.2m)
目的 北アルプスの奥穂高岳~前穂高岳に登り、岩稜歩行技術を高めるとともに、会員の交流・親睦を深める
行程
〈1日目〉 上高地~徳澤園(泊)
〈2日目〉 徳澤~パノラマコース~涸沢~穂高岳山荘(泊)
〈3日目〉 奥穂高岳~吊尾根~紀美子平・前穂高岳(ピストン)~重太郎新道~岳沢~上高地
参加者 奥西(CL)、屋根谷克(SL)、竹田(SL)、大森行(気象)、猪飼(渉外)垣野(渉外)、屋根谷邦(会計)、大森照(会計)松山(救護)、桜井(救護)、玉岡(連絡)、福島緑(連絡)中塚陽(記録)、石田(記録)
班体制 A班  (CL)屋根谷克、屋根谷邦、玉岡、中塚、垣野、松山
B班  (CL)竹田、猪飼、大森行、大森照、福島、石田、桜井
記録
 〈9月2日(金)〉
奥西車と玉岡車の2台で宇治を出発(6:30)⇒(飛騨で早い目の昼食)⇒あかんだな駐車場・3台のタクシーに分乗⇒上高地着(12:15)~徳澤園着(14:30) 
入浴の後、奥西さんによる気象講座と小宴会で盛り上がり、徳澤園の美味な夕食に満たされて心地よい眠りにつく。
 〈9月3日(土)〉
 6:03 登山スタート。天気も気分も晴れ。  新村橋を渡る。
 6:35 パノラマコースへ入る。(物差し大くらいの小さな木切れの標識しかなく、この分岐は分かりづらい) 6:55 小休憩(1)
 7:30 奥又白谷出合(1872m)で小休憩(2) 
 8:35 小休憩(3)
 9:25 小休憩(4)(2180m)屏風の耳の下の南の斜面を、屏風のコルに向かってつづら折りに登る。この辺りは夏の始めにはきれいなお花が咲いていただろうな。空は青く、スカイラインがくっきりとしている



10:20 屏風のコルの木陰で  (2420m)小休憩(5) 木々の間から、奥穂-白出のコルと穂高岳山荘  の赤い屋根-涸沢岳が横並びに遠望できた。前穂北尾根を北側に降り、ガレ場の急な下りを歩き始めると、待ち遠しかった涸沢カールが見えてきた。
12:00 ~12:30 涸沢ヒュッテのベンチで休憩(6)松山さんは足の調子がよくなく、ご自身の判断とCLの了解を得て、今日は涸沢ヒュッテに泊まり、明日の午後に上高地で我々と合流することになった。
豊富な経験に基づいた賢明な予防的判断だったとCLからの言葉。
13:10 涸沢カールをザイテングラートに向けて横切る。小休憩(7)
13:50 ザイテングラートに上がった所で小休憩(8)
14:45 〔穂高岳山荘まで20分〕の標識の所で最後の小休憩(9)
15:18 やっと山荘に到着! 徳澤からここ迄9時間15分の行程だった。 すぐに渉外担当の二人がチェックインの行列に並びに行く。 山荘は夏山ハイシーズン並みの混み具合だ。毛布は1人1枚あるが、2人で1つの布団の割り当てだ。



(3年前の「奥穂集中」の時の混み具合はもっと凄かったのを思い出す。あの時はお盆休暇後半でお天気が良かったので、ギューギュー詰めだった)
テラスに出ればブロッケン現象!歓声が沸く。「らくなん」お決まりの小宴会となれば、疲れも忘れて笑顔で乾杯! 雲海の彼方の笠ヶ岳が美しい。 食堂へ入り夕食。CLより明日の天候と行程の説明がある。
台風の影響もなく、お昼頃までは晴れの予想だそうだ。予報が悪ければ涸沢へ下る想定もしていたので、みんなで喜ぶ。らくなんの晴れ男・晴れ女、はたまた善男・善女が揃ったお陰だろうか? (「異議なし!」)吊尾根~前穂~重太郎新道~岳沢。  岩場の難所と足場の悪い下りが続くロングコースだが、明日は憧れの吊尾根コースを歩けるのでワクワク。 上高地で松山さんと合流できるよう、明日はみんなで無事に下山しよう。
早朝出発に備えて、窮屈だが割り当て分の寝床に入り、20:00頃には眠りにつく。おやすみなさい・・・
                                                        《 記録:石田 》

 〈9月3日(土)〉  穂高岳山荘~奧穂高岳~前穂高岳~上高地
夜、暑くて寝られない部屋の中で、バラバラバラと屋根を打つ雨の音、ビュービューと唸るような風の音を聞きながら明日はどうなることかと心配したが、朝起きると、山荘の窓からは山稜のシルエットの上の雲間から明るく差し込む光が見えた。どうやら夕方まで天気は、もちそうだ。
 5:30 雲の上に太陽が顔を出すと共に出発。それぞれにストレッチは済ませたけれど、いきなりの梯子、見上げるような岩場の上りはきつい。岩場を抜けると、道が緩やかになり、周りを見回す余裕も出てくる。山頂部だけ照らされた笠ガ岳、涸沢岳と北穂の間から覗く槍ヶ岳、遠く南東方向にうっすらとベールを被った様な富士山。下って来る人も何人かはいるが、上りは割合スムーズで、ジャンダルムの岩峰が見えて暫く進むと、頂上の祠や展望指示盤にいる人たちが見えた。
 6:25 奧穂高岳頂上着。狭い頂上に長居はできないので、記念写真を撮ってから一足下った岩の広場へ。奥穂は15回目というCL.が「こんな360°の展望滅多にないで。」と言う程の素晴らしい景色。各々で展望を楽しんだ後、CL.解説の山座同定。エアリアマップの展望図に書かれている山々がそのまま全部見える。いつまでも居たいけど、先は長いので、


吊り尾根を下る

 6:50 頂上発。吊り尾根──二つの三千メートル峰を結ぶ道は弧を描いて前穂に続いている。南陵の頭を過ぎると急な下りになり、長い鎖場も通過。同じような岩の重なった道は◎や↱のペンキマークをよく見ていないと方向を見失ってしまう。私達を抜かして行ったグループが2組程、ちょっと先で行きつ戻りつしているのが眼に入った。SL.のYさんは、「マークのある所しか行かへん。」と気を使っている。大分進んだはずなのに前穂高岳との距離は一向に縮まらない。A班と調子の悪いSさんを含むB班との距離が少し開き、時間的には半分進んだかなあと言い出した頃、ヒヤリハット発生。
※ 少し広い安定した所まで行って傷の手当をする。最低鞍部の分岐点からトラバース道を進んで、紀美子平に着いた。 9:00。



前穂高岳山頂

 9:20 Ykさんが残るというので荷物番をお願いして、空身で頂上を目指す。急な岩稜の直登。団体の下りを待ったり、先を譲ったりしながら、45分掛けて到着。北尾根登攀のカップルには、CL.が色々と質問を。30分前には絶景が見られたそうだが、残念、周りはガスに覆われてしまった。奥穂に比べ広い山頂に人がいる間にシャッターをお願いして記念撮影。紀美子平までの170mの急降下を足元注意で下る。
11:00 ここまでの所要時間はCTのほぼ1.5倍。16:00上高地着を目標に、重太郎新道を下る。穂高岳山荘の創設者今田重太郎さんが、妻と幼い娘・紀美子さんを伴い開拓したこのコースは北アルプス六大急登の中で1km当りの標高差が一番大きいルートだそうだ。出だしから鎖、岩場の下りが続き、ハシゴもありで、浮石や落石に気を使いながら下っていく。かわいい小さなイワギキョウが咲いていて、綺麗な青色が目に入る。ハイマツ帯では、何羽かのホシガラスが風に乗り舞っているのを足を止めて見る。樹林帯に入っても急降下は続き、木の幹や根っこを頼りに下りる。途中、←下りのプレートを持った岳沢小屋のスタッフに会った。どうやらA班は→上りの方を下ってきたらしい。後から来たB班が、正規の下山道を下り、合流地点で待っていた。その先の草付きの道には、事故多発。注意。 の立て札。岳沢小屋まであと少しだと気が緩み、危険地帯は過ぎたと油断しがちな所(重太郎新道下部)で事故の多くが起きているそうだ。救助要請するほどでないけれど、血まみれで小屋に辿り着き、手当を求める登山者が週2~3人とも。
14:20 岳沢小屋到着。冷たい飲み物&カップ麺でほっとひと息。テラスにある前穂からの急降下線の入った重太郎新道の写真を見て、思わず下って来た方を振り返る。
14:45 ここからは、普通の登山道(岳沢トレイル)。それでも、初めはガレた道が続き、足元注意で歩く。ゴゼンタチバナが赤い実をたくさんつけている。
16:10 天然のクーラー、風穴。地中の凍土から噴き出す冷風が心地よい。「昨夜の小屋にこの風が欲しかった!」
17:00 岳沢登山口。新・旧の看板が立つ。「ここから先は、登山の装備が必要です。」林道を、河童橋を目指して急ぎ足で歩く。携帯で何度か連絡したけれど通じなかったMさん。待っていてくれると思うけれど、大丈夫かな。
17:20 河童橋には、人影なし。ソフトクリーム売り場のシャッターが閉まろうとする五千尺ホテルの前でMさんと再会。歩行時間は長くなったが、9.6kmを全員自力で歩けたのは、☺

 参加者の感想
垣野 人生初の3000mを越えるお山、お天気にも恵まれ大感動でした。みなさん、どうもありがとうございました。
屋根谷M きびしい山行でしたが、いろんな経験もし、中味のある充実した山行でした。
松山 涸沢でリタイア! CLの奥西さんには 重責を伴う決断をさせてしまって申し訳なく後悔しております。足の状態は完ぺきではないのですが、一応整骨医の先生とも相談して参加を決めました。 このコースを行きたいと言う欲が多分に優先したのかも。 結果皆さんに心配をかけてしまいました。上高地で皆を待ってる間なんとなく後ろ向きにいろいろ考えていましたが、皆の明るい顔が河童橋に見えた時、来年再度挑戦しようと!むらむらと勇気が湧いてきました。皆の顔と声 とっても嬉しかったです。
桜井 奥穂高岳、前穂高岳、行ってきました。ど素人なので計画書のコースを見ても何もわからず、前に一度登っているので、まー大丈夫だろうと調べもせず、のほほんと参加してしまいました。しかしこれが大失敗。私には手に余る、きつくて恐―い山行、メンバーのみなさんには大変なご迷惑をおかけしてしまう事になりました。
先ずは登り。5分おきくらいに難所が現れ、息を整える間もない緊張の連続。涼しい顔ですいすい登っていくメンバーの方達に、心は焦る一方でした。私の後ろで奥西さんが「何ちゅう登り方しとんのや」とぼやきつつ、踵を抑えていてくれること2度3度。それでも何とか登り切り、振り返った時の景色の素晴らしさには、私が一番感動していたはずです。前穂高岳に登っている途中、今渡ってきた、釣り尾根がくっきり見えたときには、美しくて嬉しくて、涙がでてきてしまい、今泣いていたら落ちると言い聞かせて、必死でのみこみました。
そして下り。前穂から紀美子平までは、何とかついて行ったのですが、重太郎新道で完全にアウト!遅れて遅れて、桜井待ち休憩が何度も発生。申し訳なくて情けなくて。がんばっているけどちっともすすまず、自分の太ももに悪態をつきながらの下山でした。途中から遅れても焦らなくてもいいようにと、福島さんと石田さんが私を挟んで、足の置き場所、選び方など教えてくれつつ、辛い時の気の紛らわし方とかまでレクチャーしてくれ、また、お待たせしてしまったメンバーの方たちも、誰も嫌な顔ひとつせず、なんて優しいのだろうと、また泣きそうになりました。
明日から、私も優しい善良な人になるよう心がけ、太ももの筋トレに励み、申し込む山行のことは、よく調べることを誓います。
メンバーのみなさん、本当にゴメンナサイ。そして、ありがとうございました。

 ※ヒヤリハット
奧穂から前穂に向かう吊り尾根の登山道を半分位進んだ所。下りで、大きい岩を降りると道はやや左に進む。幅は割合広く、下の方に足場もあったが、前向きに降りようとした為、背負った荷物が岩につかえ滑ったものと思われる。下にいた先行者の上に落ち、振返ったSL.が身体とストックで支えたので、左に半回転して止まった。本人は腕に何ヶ所かの擦り傷、先行者に外傷はなかった。右前面には丁度40~50cm程の高さの岩があり、ガードになったのが幸い。その向こうは下まで続く切り立った崖だった。

  ※これからの安全登山のために
・荷物が邪魔するようなところは、後ろむきに降りる。
・ザックの前や横には、できるだけ物を付けないようにする。
・急なところでは、前との間隔を十分あける。
・岩場、ハシゴ、鎖などを安定して通過できるバランス感覚や体力、技術を身に着ける。
(記録 中塚 W)




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