剱岳チンネ左稜線・八ツ峰6峰フェース登攀

山行日 2017年9月7日(木)夜発~11日(月)      報告:奥西
参加者 CL花折、奥西、網岡w  (9月9日入山)宮井、村上 5名
報 告
私を除く4名は、2年前にチンネ左稜線を成し遂げている。今回この登攀(八ツ峰6峰フェース)に奥西が参加するということで、花折敬さんと網岡国さんが奥西に配慮してくれ、剱岳チンネ左稜線の登攀を計画に入れてくれた。
 思えば2008年8月、らくなん山の会の例会山行で「剱岳の源次郎尾根」(6名参加)に取り組んだ。その時、長次郎谷を挟んで北側に、いくつもの鋭い頂を突き出して稜線を登っている尾根、すなわち「八ツ峰」を見たとき、あんなとこどうして登って行くんだろうと思った。しかし、一方では、もしチャンスがあれば登りたいものだと、心の奥底で思っていた。
 そんな話を花折さんにしたかどうかはもう忘れてしまったが、2年後の2010年9月に計画してくれた。八ツ峰を登っているとき、その北に「チンネ」という岩峰があることを知った。そのチンネを登っている若者がいた。『かっこええよー』というと、手を振っていた。八ツ峰からはそんな近さだ。 その時、網岡国さんと、登れるものなら登りたいねと話していた。 今回そのチャンスが7年ぶりに巡ってきた。
コースタイム
<9月7日> 夜、花折車に網岡国、奥西が乗車して出発。深夜、立山ケーブルカー駅につき、仮眠。宮井、村上の両名は9日に熊の岩に来る。
<9月8日> 室堂8:30 - 9:15雷鳥平 - 10:30剣御前小屋 - 11:30剣沢 - 12:50長次郎谷出会い - 14:30雪渓が途切れた右岸上 - 16:00熊の岩テントサイト
室堂~雷鳥平~剱沢~長次郎谷~熊の岩
 7時(1番)のケーブルカーに乗り出発。バスに乗り換え室堂に8時到着。出発の時降っていた雨は、室堂に着くころには止み、雷鳥平に来たときは、青空が広がり出していた。天気は大丈夫。
室堂を8時30分に出発。 今回はザックが重い。テント泊用品、登攀用具、それに3日分の嗜好品など、20kgを越えてしまった。久しぶりに持つ重いザックである。
 雷鳥沢へ下り、そこから剱御前小屋までの急登が始まる。途中からザックが肩に食い込んでくる。これがつらい。休憩なしで、10時30分に小屋に着いた。1時間15分の登りであった。ここから剱沢を下る。剱沢小屋を経て下って行くと、後は雪渓を歩くことになる。源次郎尾根の取り付きにある懐かしい大岩を見て少し下ると、長次郎谷の出合に来る。ここまで約4時間30分の歩きである。


             剣沢を下る                              熊の岩

ここから長次郎谷を登るが、かなりの急登である。12本爪のアイゼンを装着して登る。やがて八ツ峰の取り付き地点に来る。懐かしい場所だ。しかし、ザックの重さが足に伝わり、足取りがだんだん重くなる。
 やがて雪渓が切れて、そのまま登ることができない。左側のガレ場を高巻き、最後は数mの岩をのっこして再び雪渓に出る。 より急斜面になった雪渓を、疲れ切った足取りで熊の岩に着く。

<9月9日> テントサイト5:10 - 6:00池の谷乗越 - 6:30 - 7:10チンネ左稜線取り付き7:35 - 11:30核心部下 - 14:00終了点 - クレオパトラニードル - 15:20Ⅵ峰 - 15:50テントサイト
チンネ左稜線登攀
 前日に出発準備をして、就寝。5時過ぎにテント場を出発。今日は、天気は最高に良い。雪渓の雪は固く締まっているのでアイゼンを装着。向かい側に渡り、登る。ガレ場が登れそうなところでアイゼンを外し、後はガレ場を登り、池ノ谷乗越に着く。ここからガレガレの池ノ谷ガリーを急降下し、三の窓へ。小さい雪渓を越えて、やっとチンネの取り付きに到着。 チンネ左稜線は一応奥西が主役なので、まずトップで取り付かせてもらう。
今回は、私と網岡国さんとでトップを交代し、花折さんは3番手で登ってもらう。ハーケンが所々に打ってあるが、何時つけられたのかもわからない。錆びているし、どれぐらいの強度があるのかわからない。一応信じてランニングビレーを取りながら登って行くが、もし落ちたら支えきれないだろうとも考える。そうすると絶対に落ちられない。3級程度の岩なので、技術的にはそんなに難しくはないが、リードをするときは、落ちられないという気持ちが緊張感を醸し出す。 チンネは250mの大岩壁で、一気に三の窓に切れ落ちているので、高度感は抜群である。平均斜度は75度である。トポではそこを15ピッチで登ることになっているが、最初ピッチをとばし、網岡国さんが最後に登ったので、12ピッチということになると思う


           チンネ左稜線                          登ってくる花折さん

8ピッチ目でチンネの核心のハングの所に来る。遠くから眺めているとツルツルの岩で、おまけにハング(前傾)しているので、こんな岩登れるのかなと思うが、近づいてじっくり岩を観察し、手足を置くところを考えるなどしていると、何となくルートが見えてくる。


                           ハングを越えた奥西

ハーケンも乱打しているとのことでもあるので、今回の主役の奥西がリードで登らせてもらう。ハーケンごとにランニングビレーを取る。ハング部分の手がかり、足がかりを慎重に見極め、「よっこらしょ」と登ると、越えられた。
 この辺りが7年前にチンネを登っていた若者がいた所で、もし周りの人(八ツ峰を登っている人だが、今回はだれもいなかった)がいたら、かっこよく登る奥西の姿を見ていただけたと思う。
 ハングを越える網岡国さん
 この後4ピッチで終了点に到着。
こうして、念願のチンネ左稜線登攀が達成できた。チャンスを与えてくれた花折さん、網岡国さんには感謝。
 下山は、クレオパトラニードルの横を通り、八ツ峰の6峰に登り、そこから5・6のコルまで下る。コルに下る手前が急降下なので、ここが一番の緊張であった。
 テント場に戻ると、宮井、村上の両名がすでに到着していて、迎えてくれた。夕食は、すき焼きで、宮井さんが運んできた15本のビール(350ml)
や焼酎を傾けながら、チンネの余韻に浸り、明日の6峰フェース登攀に想いを馳せながら就寝した。

<9月10日> テントサイト7:30 - Bフェース取り付き8:00 - 下降して正規の京大ルート取り付き9:30 - 11:00終了点 - Cフェース剣稜会ルート取り付き11:50 - 15:30終了点 - 16:20テントサイト
八ツ峰6峰フェース登攀
 宮井さん、村上さんのパーティーと花折さん、網岡国さん、奥西のパーティーに分かれて行動。
2人は、Cフェースを登った後、Aフェースを登った。
 奥西は、昨日の登攀で、右手の人差し指と中指の爪を痛め、無理をしてはいけないと思ったので、今日は3番手で登らせていただく。 我々はBフェース(京大ルート)に取り付くことにする。
      
    網岡国さんの右後方は、八ツ峰5峰。
    後ろの岩がA、B、Cフェース、100m以上ある        花折さんの後ろの岩が、右からA、B、Cフェース

リードする花折さん、確保の網岡国さん花折さんがリードで取り付く。登り始めは特に問題なく登って行くが、途中でロープが止まってしまう。どうもそこからのルートがはっきりしないようである。下から見ていていても、登ろうとして取り付いたところは難しそう。落ちたら大変なので、降りてくるということになった。懸垂で降りてきた。谷間の上を見ると、3mほどの岩があり、そこから取りつけそうに見えるので、そこへ行く。どうもここが取り付き点だ。だけど、苔が生えていたり、どうも感じがよく無い。上の岩を見ても脆そうだ。
 花折さんがリードで登る。登り始めちょっと苦労したが、難なく登る。網岡国さんも、ちょっと苦労したが、登って行く。次に奥西が登る、10mほど左上し、垂直に登るところで、結構大きな岩を右手で持ち、登ろうとすると、なんと岩が途中から割れる。岩を持ったまま5mほど落下。幸い、斜度が緩かったので、足でとんとんしながら落ちたので、衝撃はあまりかからなかったので良かった。しかし、気持ち的には一気に恐怖心が走る。もしリードだったら、こんなことでは済まなかっただろう。
結局花折さんが全部リードして3ピッチの登攀を終了。
Cフェースをリードする網岡国さん
 次に、Cフェースの剣稜会ルートを登ることにする。
 まず網岡国さんが1ピッチ目をリード。登りはじめ、ハーケンがないと言っていたが、適度な間隔でハーケンが打ってあり、快調に登る。花折さんとリードを交代して登って行く。ここの岩場は人気があるのが分かる。岩がしっかりしていて、眺めも良い。ここも2級から3級ということで、難しくはない。しかし、高度感はたっぷりある。
 最後のピッチで、花折さんが苦労している。やっとのっこしたが、なんか危なそうだった。登って行ってみると、フェースからリッジに変わり、そのリッジも両側が切れ落ちていて、危ないことこの上もない。しかし、よく見ると、リッジの右側に足がかりが見える。だから、リッジの上に手をかけ、1mほど下の足掛かりを進むと、何の問題もなかった。
リードとセカンドでは緊張感が全く違うので、ちょっと余裕をなくしたのかな。しかし、百戦錬磨の花折さんのこと、何とかする。 こうしてCフェースの登攀も終わった。時間は15時30分になっていた。
 夕食はカレーだったが、その前にいつものように宴会。持ってきた酒類はみんなで飲み干した。テント泊もこれがあるからたまらない。

<9月11日> 熊の岩テントサイト7:40 - 8:30垂のコル8:40 - 9:20剱岳頂上 - 12:40剣御前小屋 - 14:30室堂
熊の岩~剱岳本峰~室堂
 今日は、室堂へ戻る。来た道を戻るのも良いが、途中雪渓が切れているし、登り返しも大変なので、目の前に見えている源次郎尾根の2峰のコルへ登り、剱岳本峰を経て、別山尾根を室堂へ下ろうということになった。
 コルまでは、以前花折さんが登降に使ったことがあるということだった。
 7時40分熊の岩出発。すぐの小さい雪渓だが、安全のためアイゼンを付ける。あとはガレガレの斜面をコルまで着く。ここから剱岳まではかなりの急登を登るように見えるが、1時間弱で頂上に着いた。



まだまだだと思っていたので、「やったー」である。3週間前に、会の仲間と早月尾根から剱に登ったので、今夏2回目の剱岳である。
 あとは別山尾根を下り、剣山荘の上につけられている道を行き、室堂に14時30到着。
 ホテル「森の風」で温泉に入り帰京。
 網岡国さんには食事の準備、花折さんには食事の準備と運転お世話になりありがとうございました。



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